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ギムザ染色法

遺伝学部

第3章.染色体標本の作成

ギムザ染色の場合は、緑(または黄色)フィルターを用います。最もコントラストがよく、写真撮影にも適しています。
まず低倍率レンズを用いてメタフェースを選びます。大切なことは、「低倍率で選んだメタフェースのすべてが高倍率における分析に使える訳ではない」ことです。ここでいう低倍率とは、10(接眼レンズ)×10(対物レンズ)=100倍、あるいは10×20=200倍であり、高倍率とは 10(または15)×100(油浸レンズ、もしくはドライ・レンズ)=1000(あるいは1500)倍を指します。低倍率で選んだメタフェースに自信がない時には、中程度の倍率(400倍:10×40)で確かめることを薦めます。

良いメタフェースの条件は:
(1) 46本の染色体が同一平面上に均一に、かつ同心円状(やや楕円状でも良い)に広がっていること。
(2) 染色体同志の重なりがないこと。たとえ、あったとしても2〜3本程度の重なりに限られていること。
(3) 動原体が、全ての染色体においてはっきり確認できること。染色体が重なっていても動原体は重なっていないことが必要。
(4) 染色体の染まりが一定であること。つまり、どの染色体も同じ濃さで染められていること。一つのメタフェースの中で、左右または上下の染色体の染まり方に“むら”がある場合は、染色体の長さが不揃いを生じているので、このようなメタフェースを選ぶことは避ける。これは、空気乾燥法の時に生じた“ひずみ”であり、相同染色体間でも長さが違うことがある。一般的には、染色が薄ければ染色体は細長く、染色が濃ければ染色体は太く短い。
(5) 染色体数が46であることが望ましいが、低倍率での数の算定は難しい。染色体数の“ぶれ”は46(+-)1程度。
(6) 染色体を構成している2本の染色分体が明瞭に観察できること。
(7) コルヒチンの影響が強すぎて染色体が極度に短縮したもの、逆に染色体のらせん(螺旋)構造が強調されすぎているものは避ける。どちらも動原体の位置が不明瞭となる。

これら7条件のうち、低倍率で判定できるのは 項目(1)くらいで、他の条件は中、高倍率の観察によってはじめて判定が可能です。メタフェースの中で分析に適したもの、適していないものについて、図1から図3に示す顕微鏡写真によるメタフェースについて検証してみます。これらはいずれも 高倍率(10×100=1000倍)で撮影したものです。

図1.
図1.A〜D は観察に適したと判断されるメタフェースです。その中でも、図1-A は重なりもなく、円状に程よく広がった良いメタフェースです。図1-B や 図1-D はAと比べて染色体が全般的にやや短い傾向にあります。これは分裂中期でも終わりに近い時期にあることと、染色体を短縮させる効果をもつコルヒチンの作用がやや効きすぎたためと思われます。図1-C も大変良いのですが、よく見ると、点線の矢印で示してあるように、2本の染色体が並列して、1本の異常染色体(2動原体染色体)のように見える例です。

図2.
染色体分析に適さないメタフェースを 図2〜3 に示します。理由は次の通りです。
図2-A は重なりが多いこと(矢印)、しかも、動原体同志の重なりにより動原体の正しい位置を判定できないため分析は不可能です。
図2-B は分裂中期というよりは分裂前期の染色体であり、個々の染色体を識別できないのが理由です。
図2-C〜2-D は、いずれもコルヒチンが効きすぎているため、染色体はすべて短縮しすぎ、動原体の位置も不明瞭です。図2-D の中には折れ曲がった染色体もあります。こういう染色体は長さを正しく読み取ることができません。

図3.
図3-A は2つのメタフェースが隣り合っているケースです。
この例では、両者の境界線はまだよくわかりますし、分裂の進行状況も違うので、両者を区別するのは容易です(点線)。しかし、2つのメタフェースが横並びに見える場合に注意しなければならないのは、一度分裂して新たに作られた2つの細胞(娘細胞)が、並び合ったまま同時に2回目の分裂に入る場合があることです。その場合、両者の染色体は、凝縮状態はウリふたつのままで部分的にまざり合うので、誤った判定をする恐れがあります。
図3-B は1つのメタフェースで拡がり具合が左右で異なることです。左側は濃く染まっていますが、右にゆくにつれて染まりは薄く、染色体も長くなります。伸びた側の染色体を異常と判定しかねないので、分析に採用するのは見合わせるべきでしょう。
低倍率で選ばれたメタフェースについては、高倍率レンズ(油浸レンズ)に切り替えて観察・分析を行います。その概要は以下のとおりです。
(1) 最初に、染色体数を数えます。慣れないうちはカウンターを使っても構いません。
しかし、じきに慣れて頭の中でカウントできるようになります。合格基準は、45、46、47本の場合だけです。
(2) 次に個々の染色体の形や長さについて分析を行います(核型分析といいます)。通常の方法は、2000〜3000倍に拡大した顕微鏡写真から個々の染色体を切り出し、ルールにしたがって相同染色体を対に並べて、異常の有無を確かめ、もし異常があればどの染色体が異常なのかを判定します。
(3) しかし、これでは現実には異常の判定に時間が掛かりすぎるので、一歩進めて、顕微鏡下で直接メタフェースを観察しながら異常の有無を判定するための訓練が必要です。これができるようになれば、正常なことが確実な場合、顕微鏡写真を撮って染色体を切り出す必要はなくなります。ただし、明らかに異常が存在する場合はもちろんのこと、少しでも異常が疑われる場合は、必ず写真撮影することが大切です。