Menu does not appear
-- SiteMap

ギムザ染色法

遺伝学部

第4章.染色体標本の作成

46本の染色体にはヒトに特有の規則性が認められます。この規則性をルール化した「ヒト染色体に関する国際命名規約(ISCN)」があり、染色体分析はこのルールに従って行います 。(註1)
この中には、染色体とその部分、および染色体の異常などを表記できるさまざまな略称やシンボルのリストがあります。重要と思われる項目を 表1. に示します。
表1. 安定型染色体を表記するための主要なシンボルと略記法について
略語
用語(英語)
用語(日本語)と解説
cen centromere 動原体(セントロメア)
cx complex interchange 複合交換型異常
del deletion 欠失
h heterochromatin 異質染色質(ヘテロクロマチン)=二次狭窄
ins insertion 挿入
inv inversion 逆位
mar marker chromosome どの染色体群にも属さない異常染色体
- loss 消失、または喪失
p short arm of chromosome (染色体の)短腕
pcd premature centromere division 動原体の早期分裂
+ gain 増加
q long arm of chromosome (染色体の)長腕
rcp reciprocal 相互型(転座など)
s satellite 付随体
; separate altered chromosomes
and breakpoints
二個(以上)の異常染色体を切り離して記載
t translocation 転座
メタフェースの観察を始める前に染色体を構成しているさまざまな部位の名称の中で、特に重要と思われる項目について以下に記述します。すべての染色体には必ず動原体(cen)があり、cenを境にして長い部分を長腕(q)、短い部分を短腕(p)と呼びます。核型分析では、短腕を上、長腕を下に位置します。

図4.
右から2番目の図に示すように、13番、14番、15番、21番、22番染色体の短腕の先端にはカタツムリの眼のような付随体(satellite: s)が存在します。ここにはリボソームRNAの遺伝子が存在しています。“h”の記号で示すものは二次狭窄とよばれるものです。一次狭窄はcenを意味し、これはすべての染色体に存在します。“h”は特定の染色体に出現し、1番、9番、16番染色体においてはcen近くの“くびれ”状の構造として観察され、薄くて弱い染色性を示します(ヘテロクロマチン)。他方Y染色体においては、“h”はcenではなく長腕の末端部に観察されます。
個々の染色体の特徴を理解するためには、表2. を見てください。長腕と短腕の長さを計測し、全長に対する短腕の比をセントロメア比(CI = centromere index)と呼びます。比の値が 50に近づくにつれて、cenは中央部にありますが、値が小さくなるにつれて、cenは末端部に位置するわけです。
表2 染色体の長さ (%による相対値: *1) と セントロメア比 (*2)
染色体番号
長さ ( 短腕:長腕 )
セントロメア比 (CI)
1
9.11 ( 4.43:4.68 ) 48.6
2
8.61 ( 3.35:5.26 ) 38.9
3
6.97 ( 3.30:3.67 ) 47.3
4
6.49 ( 1.80:4.69 ) 27.8
5
6.21 ( 1.66:4.55 ) 26.8
6
6.07 ( 2.30:3.77 ) 37.9
7
5.43 ( 2.01:3.42 ) 37.0
X
5.16 ( 1.94:3.22 ) 37.5
8
4.94 ( 1.62:3.32 ) 32.8
9
4.78 ( 1.56:3.22 ) 32.7
10
4.80 ( 1.55:3.25 ) 32.3
11
4.82 ( 1.95:2.87 ) 40.5
12
4.50 ( 1.23:3.27 ) 27.4
13
3.87 ( 0.64:3.23 ) 16.6
14
3.74 ( 0.69:3.05 ) 18.4
15
3.30 ( 0.58:2.72 ) 17.6
16
3.14 ( 1.33:1.81 ) 42.5
17
2.97 ( 0.94:2.03 ) 31.9
18
2.78 ( 0.74:2.04 ) 26.6
19
2.46 ( 1.10:1.36 ) 44.9
20
2.25 ( 1.03:1.22 ) 45.6
21
1.70 ( 0.49:1.21 ) 28.6
22
1.80 ( 0.51:1.29 ) 28.2
Y
2.21 ( 0.51:1.70 ) 23.1
*1 常染色体(22対44本)の長さの総和を分母としてパーセンテージで表す。
*2 セントロメア比 (centromere index) = [ 短腕 ÷ (短腕 + 長腕) ] × 100
筆者註
註1:

染色体研究の専門家が1960年に米国デンヴァーに集まり、人類染色体国際命名規約委員会を発足させ、規則性に基づく染色体の分類法についてルール作りが行われました。これはデンヴァー会議と呼ばれ、人類染色体研究に関する統一された公式の国際的規約が作られたという画期的なイベントでした。この後、1963年にロンドンで新知見を取り入れたルールの改訂が行われました(ロンドン会議)。さらに、国際人類遺伝学会議が開かれる度に改訂や追加作業が行われることになり、1966年にはシカゴで、また1971年にはパリで、それぞれ会議が開かれました。

1976年にメキシコで国際人類遺伝学会議が開かれた時、世界の各地域を代表する命名規約国際常任委員を選挙によって選出することが決まりました。それまでは、規約がデンヴァー会議、ロンドン会議、シカゴ会議、パリ会議などのように、会議が開かれた地名を付けて呼ばれていましたが、1978年以後、規約は[人類染色体国際命名規約(An International System for Human Cytogenetic Nomenclature)]の頭文字のISCNとし、それに改訂の年度をつけることになりました [ISCN(1978)、ISCN(1981)、ISCN(1985)、ISCN(1991)、ISCN(1995)]。さらに、それぞれには、新しい技法の進展に基づく新しいルールの内容を表わす副題が付記されます。ISCN(1981)には高精度分染法、また、ISCN(1991)には癌の染色体のためのガイドラインが記載されました。