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ギムザ染色法

遺伝学部

第6章.正常変異染色体の種類

第5章で説明した個人差について例を示します。もしもこういう人の染色体異常を観察することになっても、全ての細胞に同じ変化が認められるので放射線によって生じた異常とは簡単に区別できます。

染色体の変異(正常変異、あるいは異形染色体)を生まれながらに持つ人がヒト集団中に 2%〜5%の割合で存在します。ほとんどが“h”と“s”の変異に関するもので例を 図8. と 図9. に示します。

図8.
図8-A では1番、Bでは9番、Cでは16番の“h”が細長く伸びた状態になっており、1個の細胞だけを観察すると染色体の形態的異常と判定してしまう恐れがあります。特に、図8-C の16番では長腕が“鶴の首”状を示さなければ、C群の 10番や 12番と全く区別がつきません。

図8-D は 9番染色体が逆位を示す例です。この異常は親から受け継がれた遺伝的な形質です。この異常自体は自然集団中に約1%という比較的高い頻度で存在し、病気との関連はありません。

図9.
図9. はD群とG群の短腕、もしくは“s”に関連する正常変異体です。これには短腕もしくは“s”部位が大きくなっている場合(図9-A はD群、図9-B はG群)と、短腕が完全に欠失した場合(図9-C はD群、図9-D はG群)とがあります。いずれも識別は容易です。

第7章.安定型構造異常−総論

基本的な姿勢は、染色体の長さとCI値、あるいはhとs部位の長さなどを用いて、正常と異常の間の微妙な違いをできるだけ客観的に判定することです。

同じ長さの異常でもそれが長い染色体に生じた場合には検出しにくく、反対に短い染色体に生じた場合には検出しやすいという事実があります。8マイクロメートルの染色体が 10マイクロメートルに変化しても、その違い(25%増)を簡単に決めることはできませんが、同じ2マイクロメートルの増加でも、それが 2マイクロメートルの染色体に生じたなら(つまり 4マイクロメートルに変化した場合)は、その違いは容易に指摘できます。
染色性には変化はないけれど、相同染色体の一方が 10%長い時は: (i)一方が短腕・長腕共に 10%ずつ伸びている場合と、(ii)短腕(または長腕)の長さは同じだが、長腕(短腕)が全体の 10%に匹敵する分だけ長い場合、の2通りの可能性があります。(i)はCIに変化はなく、(ii)はCIが変化していることになります。この場合の常識的な解答は (i)は正常の範囲内での変化であり、(ii)は恐らくは異常染色体であろうと予想されます。長さの違いだけではなく、CIの違いの有無を確認することが大切です。

図10.
その他にメタフェースの時期、つまり、中期の前期か後期かによっても、また、1本の染色体の中でも、部分的な幅の違い、あるいは染色性が薄いか濃いか、によっても影響されます。同一メタフェース中の相同染色体の間でも、染色性が濃いものと薄いものがあります。濃く染まる染色体は太く短くなる傾向がありますし、染色性が薄い染色体は細長くなります。つまり、染色体量=染色の濃さ(太さ)×長さ=一定、ということです。この関係はほとんどの場合に当てはまります。

では安定型異常検出の具体的な方法に入りましょう。
図10. 上には染色体のcenの付近にいろいろな記号が書き添えてあります。数字の1、2、3、16、17、18は染色体番号であり、B、D、F、Gは染色体群を表わします。C群には○印がつけられており、Y染色体はそのままYを用いています。慣れてくると、Yの判定がもっとも容易だからです。

Y、G群、D群、16、17、18の数はそれぞれ正常です。B群は4本、C群は15本あり、いずれも変な染色体は見当たらないので、これらも正常のようです。1、2、2を見ると、3番は正常ですが、1番が3本と2番が1本であることが確かめられました。図10 の右上に+1、-2と記されています。1番に見えた3本の中の1本を丸で囲いました。なぜならば、この染色体には1番に特有の“h”がcenの付近にないからです。

このメタフェースにある1本の染色体が異常のようで、他の45本は正常と判断されます。実際にカリオタイプして見ると(図10下)、2番染色体の逆位(inv[2p+q-])であることが分かります。このように、メタフェースの中の1本だけが異常な時は、欠失か逆位が疑われます。

以下それぞれの安定型異常について例を説明していくことにしましょう。