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ギムザ染色法

遺伝学部

第8章.安定型構造異常−各論1.欠失

欠失delは1本の染色体の長腕か短腕のいずれかが短くなっている異常です。僅か1本の異常ですから、逆位との区別が難しい場合があります。また逆位と同様に長い染色体に多く出現する異常でもあります。
4つの異なるメタフェースとカリオタイプによる具体例を 図11、12 に示します。これらの図に示す異常もA群やB群で占められています。一方、小さな染色体では、ほんのわずかの欠失でも識別できますから、異常の発見率が逆に偏る可能性があります。
図11.
図11左は、B群からG群までに異常はありませんが、A群に異常があります。1番が1本なのに対して、3番が3本あります。この結果から、1番染色体の長腕の欠失del(1q)が予測されます。図11右は2番染色体が1本足りず、B群染色体によく似た異常染色体があります。よく見ると、短腕も長腕もB群よりもわずかに長いこと、および長腕の長さが2番とほぼ同じであることから、2番染色体短腕の欠失del(2p)と判定されます。
図12. 左右は異常の判定が難しい例で、いずれもB群染色体が関与しています。
左の図は、矢印で示すB群の1本にやや異常が疑われます。残りの3本よりも短腕が心持ち短い程度です。もしも、長腕が他の3本よりもやや長ければ、おそらくは逆位が疑われるところです。長腕は他のB群染色体と比べて長いわけでもないので、ここは短腕部位の欠失と判定しました。この判定の唯一の基準はCIが 20%か、それ以下という点にあります。
右図もB群染色体の異常です。4本のうちの1本がC群染色体の中でも小さい方に属するものと区別できない程類似しています。つまり、カリオタイプはC群が1本多く、B群が1本少ないことになります。記載にある通り、del(Bq)、つまりB群染色体長腕の欠失と判定されます。
図12.
欠失型異常を識別するポイントは、1つの染色体群の中で1本だけが異常であることで、ある染色体群の染色体が1本不足していて同時に他のどの染色体群にも属さない形や長さの異常を生じる場合と、1ランク下の染色体群に存在する過剰な染色体として発見される(つまりB群染色体の欠失は1ランク下のC群染色体1本の増加となる)場合とがあります。

第9章.安定型構造異常−各論2.逆位

逆位の特徴はどの染色体群にも属しない異様な形の染色体が1本だけ出現し、その結果としてある染色体群の染色体数が1本不足することです。このような特異な形態異常の染色体をマーカー染色体と呼びますが、これは欠失や転座にも見られます。逆位の特徴は、ある染色体群に属する染色体が逆位の場合、逆位染色体の長さはその群に特有の長さの範囲を越えませんがCIに変化を生じます。長さに関する限りは各群の染色体数に変化はありません。
cenから等距離にある位置に生じた両腕上の切断と誤修復による逆位は、通常法による観察では識別はできません。これは両腕の末端部から等距離のところに生じた切断と再結合でも同じように発見できません。
具体的な例としてまず 図13 を見ることにしましょう。
図13.
図13に2番染色体の逆位(矢印)を示します。
左の例は逆位染色体が特異的な形態となっているので、識別は容易です。他の染色体がすべて正常ですから、2番の逆位であることは疑いもありません。右の例は、2番の長腕がやや長く、短腕がやや短いこと、しかも正常2番染色体と異常染色体との間には長さの違いはありません。変化しているのはCIです。
図14は 左がB群染色体、右がC群染色体の逆位です。
図14.
左のB群の例はCIの違いだけが根拠で、短腕のCIが 30%前後です。この程度がおそらく識別しうる限界のように思います。右の図はC群の逆位ですが、異常染色体がD群かG群の「化け物」のような形をしています。長さがC群の範囲にあることと、D群とG群の数がそれぞれ6本と4本であることが確認されれば、C群の逆位であることの判定は容易です。
図15.
図15左は G群が5本(その内の1本はY染色体)、C群が16本(男性だからC群が1本多い)、そしてD群から1本が失われています。C群の過剰の1本は小さい方に属し、長さはD群と変わらないようです。とすれば、 D群の1本が逆位を生じた結果、cenの位置が中央寄りの小型C群染色体へと変化した、と考えるのが妥当のようです。このメタフェースに含まれる染色体の1本が他の染色体と離れた位置にあるのは少々問題です。完全なカリオタイプ分析をしない場合には、染色体数の変異の原因となりそうなメタフェースといえます。

図15. 右は 複雑な異常を持つ例です。まずB群の1本に生じた逆位ですが、その形態は3番染色体に実によく似ています。(下図において矢印をつけた5番染色体)
これを逆位と判定した訳は、逆位染色体は3番よりも長腕、短腕共にやや短いからです。さて、このメタフェースには別の異常も存在しています。即ち、1番によく似た染色体(下図において3番の矢印をつけたもの; hが見られない)と16番によく似た染色体(11番の矢印をつけたもの; 正常の16番よりも短腕が長い)がそれぞれ観察されます。そこでB群染色体の逆位はないものと考えて(即ち5番の矢印をつけたものを正常の3番染色体とみなして)、これら2本の異常染色体のみの組み合わせにより、異常は t(Bq-; Cp+)のみとすることも可能です。
しかし、そうしなかったのはB群の逆位と考えた異常染色体(5番の矢印をつけたもの)と正常の3番染色体との間には長さの違いがあるために、正常のペアとするには問題があると考えたからです。そして、逆位と転座の両方を持つと解釈しました。