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細胞生物学研究室

■ 分子腫瘍学研究

図. がん遺伝子、がん抑制遺伝子とは
ヒトが1個の受精卵から大人になるまでの間には、体細胞が何万回も繰り返し増えることが必要です。しかし体細胞は無秩序に増えているわけではありません。体の形を作るために必要な時と場所で増え、必要のない時には増えるのを止め、また、自ら死んでいくといったことが巧妙に調整されています。

がん原遺伝子は体細胞が増えるときにアクセルを踏む役割を持っている遺伝子、がん抑制遺伝子はブレーキの働きを持っている遺伝子といえます。体細胞ががん化するときには、がん原遺伝子に傷がついてがん遺伝子に変わりアクセルを踏んだままになる、あるいはがん抑制遺伝子が壊れブレーキが利かなくなる、といった現象が同じ細胞に幾つも起こります

がんの種類が同じでも、傷ついたり壊れたりする遺伝子の種類や変化は必ずしも一様ではありません。そのため、多種類の遺伝子を広い範囲にわたって調べる必要があります。私たちは、原爆放射線によって引き起こされた遺伝子上の傷を、極微量の貴重な検体を用いて効果的に調べるために、最新の技術に様々な改良を加えながら使用しています。
図. 放射線によるがん遺伝子・がん抑制遺伝子の傷を見つける

マウスオーバーで部分拡大図をご覧いただけます。
図1. 原爆被爆者における がん抑制遺伝子p53に異変を持つ
肝細胞がんの割合と肝臓の被曝線量
表1. チェルノブイリの事故による放射線汚染地域における
小児甲状腺がんの活性化 RET/PTC1がん遺伝子
まとめ
放射線や化学変異原物質によって、細胞の遺伝子DNA突然変異が誘発されることがよく知られています。突然変異がいろいろながん遺伝子、がん抑制遺伝子に次々と起きると細胞はがん化すると考えられています。

原爆被爆者由来の肝細胞がんでは、放射線量が上がるにつれてがん抑制遺伝子p53の点突然変異が多く見つかるようになります(図1)。チェルノブイリ原子力発電所事故による放射線汚染地区に居住している小児に発生した甲状腺がんでは、RETと呼ばれるがん原遺伝子が高頻度に異変を起こし、RET/PTC1というがん遺伝子に変化していることが最近の私たちの研究で分かりました(表1)。

この事実は、放射線によって傷つけられたがん遺伝子やがん抑制遺伝子が、発がんに関与することを示唆しています。今後、原爆被爆者に発生したがんに放射線による傷が残っているか、放射線によるがん化はどういう機構で起きているのか、などの疑問を分子腫瘍学的研究によって明らかにしていきたいと考えています。