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放影研報告書(RR) 5-00

広島・長崎の原爆被爆者の被爆20年後における精神的後遺症

山田美智子, 和泉志津恵
Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol 37(9):409-15, 2002
要 約
背景 原爆被爆は著しいストレスを引き起こす出来事である。被爆の精神的影響に関する疫学的研究はほとんどないが、被爆者に関する医学的研究からは自律神経失調症や神経症を暗示するような様々な症状の増加が示唆されている。この研究では、広島・長崎の原爆被爆による精神的影響を調べた。

方法
 1962−65年に成人健康調査対象者 9,421人について、同意に基づいて実施された自己記入医学問診票から、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition(DSM-IV)の全般性不安障害と身体表現性障害に関する診断基準に合致する幾つかの質問を選択し、「不安症状」と「身体表現症状」の指標として用いた。これらの精神的症状の有病率と年齢、性、都市、急性放射線症状、原爆投下時にいた場所が市内か市外かを示す被爆状況、爆心地からの距離、既往歴、および家族の死亡との関連について解析した。

結果
 「不安症状」と「身体表現症状」の有病率は、急性放射線症状があった人の方がなかった人よりも高く、急性放射線症状があった場合のオッズ比は、「不安症状」で 1.73、「身体表現症状」で 1.99であった。これらの症状の有病率は市内にいた人の方が市内にいなかった人に比べて有意に高かった。市内にいた人の中では、爆心地の近くで被爆した人は爆心地から離れて被爆した人に比べてこれらの症状の有病率が低かった。年齢、性、都市もこれらの症状の有病率に影響していた。潰瘍や神経症の既往は「不安症状」と「身体表現症状」のリスク因子であるが、原爆被爆に関連する「不安症状」と「身体表現症状」の有病率の増加は、疾患の既往や家族の死亡とは無関係であった。

結論
 原爆被爆者では、「不安症状」と「身体表現症状」の有病率の増加が原爆被爆から 17−20年後においても認められ、原爆被爆の精神的影響が長期にわたり継続していることを示している。また、精神的後遺症と身体的後遺症とは独立したものであった。