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放影研報告書(RR) 1-02

血液Tリンパ球におけるクローン性染色体異常に基づく血液幹細胞数およびリンパ球系幹細胞数の推定

中野美満子, 児玉喜明, 大瀧一夫, 伊藤正博, 阿波章夫, Cologne JB, 中村 典
Radiat Res161(3):273-81, 2004
要 約
ヒトにおける長寿命血液幹細胞(HSC)の増殖能を知ることは、骨髄移植や遺伝子治療にとって重要であるが、それを知るための手段には制約があり、適切なデータを得ることは難しい。我々は、クローン性染色体異常を個々のHSCの標識(マーカー)として用いることで、HSCに由来する子孫細胞集団の追跡が可能になると考えた。FISH法により、原爆被爆者513人について1人当たり500個の血液Tリンパ球をスクリーニングした結果、染色体異常クローンを96種類検出した。その際、最低3個の細胞において同一の染色体異常を持つものをクローンと定義した。観察されたクローンは、クローンサイズ(クローン細胞がリンパ球全体に占める割合)が小さいものほど数が多いという逆比例の関係にあった。従って、個々の幹細胞から産生される子孫細胞の数は極めて不均一であると推察された。今回の調査条件(500細胞検査)でクローン形成に寄与している幹細胞絶対数は、被曝していないヒトで約2個と推定された。更に 10種類のクローンについてその由来を精査した結果、HSCと成熟Tリンパ球のどちらもほぼ等しくリンパ球クローン形成に寄与していることが明らかになった。従って、上記の幹細胞数推定値(2個)のうち、1個はHSC由来、他の1個は成熟Tリンパ球由来と考えられる。我々のモデルによると、10人に1人はリンパ球全体の 10%以上を占めるようなクローン(ただし染色体異常は持たない)を保持していると予測される。すなわち、クローン性拡大自体は珍しい事象ではなく、従って健康に悪影響を及ぼすものではないと思われる。