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放影研報告書(RR) 3-02

原爆被爆者のT細胞は黄色ブドウ球菌毒素の刺激に対して試験管内で弱く応答する:このT細胞応答の低下は末梢リンパ球集団に含まれるナイーブCD4 T細胞の減少に起因するか?

楠 洋一郎, 山岡美佳, 笠置文善, 林 奉権, 小山和章, 児玉和紀, MacPhee DG, 京泉誠之
Radiat Res 158(6):715-24, 2002

要 約
以前、我々は高線量被爆者の末梢血CD4 T細胞集団に含まれるナイーブT細胞が非被曝対照者に比べて有意に少ないことを報告した。原爆被爆者におけるこのようなCD4 T細胞免疫の低下が普遍的な病原菌の感染に対する免疫系の応答性に影響を与えたかどうか確認する目的で、723人の被爆者について、そのT細胞が黄色ブドウ球菌毒素であるSEB、SEC-2、SEC-3、SEEならびにTSST-1のそれぞれに対して試験管内で増殖する能力を検討した。その結果、これらの毒素に対する被爆者のT細胞の増殖反応が被曝線量の増加に伴って弱くなることが明らかになった。また、それらの増殖反応は末梢血リンパ球集団で検出されるCD45RA陽性(ナイーブ)CD4 T細胞の割合と正の相関を示したが、CD45RA陰性(メモリー)CD4 T細胞の割合との相関は認められなかった。更に、心筋梗塞の既往歴を有する被爆者のT細胞は、今回調べた黄色ブドウ球菌毒素のほとんどすべてに対して応答能が低い傾向にあり、心筋梗塞の既往歴のない被爆者に比べて末梢血リンパ球中のCD45RA陽性(ナイーブ)CD4 T細胞の割合が有意に低下していた。以上の結果は、原爆放射線によって、被爆者のナイーブT細胞プールを維持する能力が損なわれたことを明白に示している。そのため、原爆被爆者では、常在病原菌である黄色ブドウ球菌が産生する毒素に対して比較的弱い応答能を示す傾向にあると考えられる。