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放影研報告書(RR) 9-03

低線量におけるわずかだが有意な影響以外にはヒト胎児のリンパ球前駆細胞は放射線被曝による染色体傷害を記録していない

大瀧一夫, 児玉喜明, 中野美満子, 伊藤正博, 阿波章夫, Cologne JB, 中村 典
Radiat Res 161(4):373-9, 2004
要 約
ヒトの胎児は一般的に放射線に対して感受性が高いと考えられている。それは低線量の診断用X線被曝による小児白血病リスクの増加が示唆されているからである。これに対して、動物を用いた研究では一般的に胎児の高い放射線感受性は観察されておらず、両者の食い違いの理由は明らかになっていない。我々は、胎内被爆者の血液リンパ球における転座頻度を測定した(検査時年齢は40歳)。しかしその結果は、成人よりも胎児の方が放射線感受性が高いという予測とは反対に、線量の増加に伴う転座頻度の増加は観察されず、0.1Sv以下の低線量におけるわずかな上昇(1%未満、しかし統計学的には有意)を認めただけであった。今回の結果から、胎児におけるリンパ系細胞あるいはその前駆細胞は、二つの集団から成り立っていることが示唆される。一方は小さな集団で、転座誘発と細胞死に関して感受性が高いが、50mSvを超えると急激に集団が減少する。他方は主たる集団で、染色体異常を生じないので、傷害を記録する意味では感受性が低いと思われる。我々の結果は、低線量のX線に被曝したヒト胎児においては無視できない量の小児白血病リスクが示唆されている反面で、主として高い線量を用いた動物実験においてはそうした事実を確認できていない、という長年にわたる矛盾の解決に生物学的な基盤を提供するものである。