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放影研報告書(RR) 6-05

原爆被爆者のリンパ球クローン形成細胞においては染色体異常形成に関する遺伝的不安定性の事実は見られない

児玉喜明, 大瀧一夫, 中野美満子, 濱崎幹也, 阿波章夫, Lagarde F, 中村 典
Radiat Res 164:618-26, 2005
要 約
放射線によって生じるゲノム不安定性に関する研究は、主として培養細胞を用いて行われているが、体内(特にヒト)における研究は極めて少ない。生物体内の研究における障害は、放射線被曝直後に生じる遺伝的変化と、遅れて生じる変化とを区別する信頼できる生物学的指標がないことである。この問題を研究するために本論文では、原爆被爆者における染色体異常という指標を持つクローン性T細胞集団を用いて細胞遺伝学的不安定性を評価する方法を紹介する。基本的な考えは、クローンを構成する転座は恐らく放射線によって生じた異常を持つ単一の前駆細胞に由来し、その細胞は分裂を繰り返した結果、リンパ球集団全体の数%を構成するに至ったとするものである。従って、もしも遺伝的不安定性が被曝直後から生じていたのであれば、これらクローン性の子孫細胞中に、追加の(ただし単発の)染色体異常を生じることが期待される。今回の研究では、Gバンド法で検出された 936個のクローン細胞中に 6個の追加転座を認めた(0.6%)。多色FISHの場合は、1.2%(4/333)であった。これらの頻度はどちらも、Gバンド法による対照群における値(1.2%、219/17,878)と比較して高くはなかったので、交換型染色体異常の頻度を上昇させるような染色体不安定性は、放射線被曝により一般的に起こったのではないという結論に達した。