Menu does not appear
-- SiteMap

放影研報告書(RR) 14-05

原爆被爆者の歯エナメル質におけるESR信号レベルの太陽光とイオン化放射線の寄与を推定する方法

中村 典, Cullings HM, 児玉喜明, 和田卓郎, 宮澤忠蔵, 李 薫, 阿波章夫
Radiat Res 165(3):359-64, 2006
要 約
歯のエナメル質における電子スピン共鳴法(ESR、あるいは電子パラマグネティック共鳴法EPR)による解析は、ヒトにおける過去の個人放射線被曝量を評価するための有用な方法である。この方法の一つの問題点は、観察されたESR信号は太陽光に含まれる紫外線の影響を内蔵していることである。これは前歯において特に著しい。この紫外線問題を避けるには奥歯を測定対象とすればよいのであるが、しばしば特定の人(例えば、染色体異常検査のための血液を提供した人)からは前歯しか入手できない場合もある。従って、ESR信号に含まれる紫外線効果を補正し、そのことによりイオン化放射線によるESR線量推定を可能にする方法が望まれていた。この問題を吟味するために、今回我々は、様々な種類の歯96本についてESR信号を測定した(ただし、頬側と舌側とを別々に)。これらの歯の提供者は原爆被爆者の対照群の人である(推定線量は5 mGy未満)。測定の結果、大臼歯を除いて、頬側の平均ESR線量は舌側の平均線量の約2倍であることが明らかになった。換言すれば、紫外線によって舌側に生じた信号は、頬側線量と舌側線量の差に等しいということである。この関係を用いて、紫外線とイオン化放射線の両方に被曝した前歯について紫外線被曝の補正を行うと、推定された線量は同じ人の奥歯について得られたESR線量(あるいは、染色体異常頻度から得られた推定線量)にかなり近い値になることが明らかになった。以上の結果から、ESR法により個人線量を評価するには大臼歯の測定が最も良いが、もしも前歯しか入手できない場合には、歯の内外半分についてそれぞれ測定を行えば、紫外線被曝の平均的な寄与の推定が可能になると結論される。ただし、個々の歯におけるバラツキは少なくない。