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放影研報告書(RR) 3-06

原爆被爆者の成人甲状腺乳頭癌に見られるBRAF点突然変異の出現頻度は被曝放射線量に相関する

高橋恵子, 江口英孝, 有廣光司, 伊藤玲子, 小山幸次郎, 早田みどり, Cologne JB, 林 雄三, 仲田義啓, 中地 敬, 濱谷清裕
Mol Carcinog 46(3):242-8, 2007
要 約
RET/PTC再配列あるいはRASおよびBRAF遺伝子の突然変異といった遺伝子変化によって引き起こされるマイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼシグナル伝達系の恒常的な活性化が、甲状腺乳頭癌の発がんにおいて早期の主要な出来事であると考えられている。これらのうち、最近同定されたBRAFV600E突然変異は、成人の甲状腺乳頭癌患者で高頻度に見つかっている。しかしながら、成人甲状腺乳頭癌におけるBRAFV600E突然変異と放射線被曝との関連はいまだ不明である。本研究では、広島の原爆被爆者に発生した成人甲状腺乳頭癌64症例(原爆被災後に発症した、非放射線被曝[0 mGy]17症例と被曝47症例)についてBRAFV600E突然変異を調べ、このBRAFV600E突然変異の有無と臨床病理学的ならびに疫学的因子との関連性を検討した。BRAFV600E突然変異を持つ甲状腺乳頭癌患者の被曝線量の中央値は、BRAFV600E突然変異を持たない甲状腺乳頭癌患者に比べて有意に低かった(18.5 対156.9 mGy、ウィルコクソン順位和検定、P = 0.022)。放射線被曝群の中でBRAFV600E突然変異陽性者と陰性者の間には、甲状腺乳頭癌の潜伏期間(被爆から診断までの期間)の中央値に有意な差が認められた(29 対 21 年、ウィルコクソン順位和検定、P = 0.014)。これらの関連性は、因子間の相互作用の可能性を考慮に入れて行ったBRAFV600E突然変異を従属変数とするロジスティック回帰分析により更に確認された。すなわち、被曝線量(対数変換)と潜伏期間は、それぞれ独立して、BRAFV600E突然変異に影響を与えることが見いだされた(それぞれP = 0.039 と P = 0.010)。これらの結果は、放射線に被曝した人における甲状腺発がんへのBRAF突然変異のかかわりが、被曝していない人とは異なるかもしれないことを示唆している。

The presence of BRAF point mutation in adult papillary thyroid carcinomas from atomic bomb survivors correlates with radiation dose, Mol Carcinog Vol. 46, No. 3, 2007, 242-8 © 2006 Wiley-Liss, Inc. Wiley-Liss, Inc., a subsidiary of John Wiley & Sons, Inc. の許可を得て掲載。