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放影研報告書(RR) 5-06

放射線により誘発されたタンデムリピート(縦列反復)配列におけるゲノム不安定性は、必ずしもユニーク塩基配列における不安定性の指標にはならない

野田朝男, 児玉喜明, Cullings HM, 中村 典
Radiat Res 167(5):526-34, 2007
要 約
ミニサテライト塩基配列や遺伝子の部分重複に見られるようなタンデムリピート(縦列反復)配列は、遺伝的に不安定である。放射線はその不安定性を増大させることができるが、不安定性の増大がもたらす生物学的な効果については十分理解されていない。この点に関して、ゲノム中の異なる配列における不安定性の特性を理解するため、ヒトHT1080細胞を用いてHPRT遺伝子座に8.4 kbの部分重複を遺伝子工学的な手法により導入した組み換え細胞を作製した。この細胞を用いて、反復配列で見られた不安定性(部分重複からの復帰変異率として測定)が、復帰変異後の野生型HPRT遺伝子の前進突然変異率に影響を与えるか否か検討した。4 GyのX線照射後、生き残った細胞の中から500個のコロニーを分離して調べたところ、32個(全体の6%)において十分な細胞分裂の後にも復帰突然変異率が上昇していた。これらの細胞クローンは全般的には前進変異率も高い傾向を示したが、個々の細胞クローンについて見ると復帰変異率と前進突然変異率との間には相関は見られなかった。更に、これら不安定細胞クローン群は活性酸素(ROS)の細胞内産生レベルが全般に高く、核内γ-H2AX フォーカス形成量も増加傾向を示した(これらはDNA損傷応答の指標として用いられる)が、その場合でも個々の細胞においては復帰変異率との間に相関は見られなかった。従って、反復配列における遺伝的不安定性は、遺伝子をコードするユニーク塩基配列の変異の起こりやすさの指標にはならないと結論付けられた。これは、放射線被曝により生じる遺伝的不安定性には多数の機構がかかわっているためではないかと考えられる。