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放影研報告書(RR) 7-08

原爆被爆者の長期保存甲状腺がん組織のRNAを解析するための改良法

濱谷清裕, 江口英孝, 向井真弓, 小山和章. 多賀正尊, 伊藤玲子, 林 雄三, 中地 敬
Thyroid 20(1):43-9, 2010
要 約
背景 原爆被爆者の甲状腺がん組織試料の多くは、非緩衝ホルマリン固定、パラフィン包埋試料として数十年間保存されており、原爆被爆者における甲状腺発がんの機構を解明する上で、このような保存試料の分子腫瘍学的解析は必要不可欠である。RET遺伝子再配列は最も重要な標的であるが、原爆被爆者の貴重なパラフィン包埋組織試料から抽出されたRNAはその使用量が限定されるために、13種類すべての型のRET遺伝子再配列を解析するのは困難である。本研究において我々は、保存甲状腺がん組織試料より抽出した少量のRNAを用いた、cDNA末端の5' rapid amplification(RACE)法を改良・確立した。

方法 異なる3人の患者由来の三つの保存甲状腺がん組織試料をin-house controlとして用いて、switching mechanism at 5' end RNA transcript(SMART™)RACE法を改良するための条件を決定した。すなわち、RET/PTC1再配列を持つ組織試料とRET/PTC3再配列を持つ組織試料を陽性試料として用いた。RET遺伝子のチロシンキナーゼ領域の発現が検出できないもう一つの試料を陰性試料として用いた。

結果 長期保存の非緩衝ホルマリン固定、パラフィン包埋甲状腺がん組織より抽出した少量のRNA(10 ng)を用いて、SMART技術を応用することにより5' RACE法を確立した。この改良されたSMART RACE法により、一般的なRET遺伝子再配列を同定できるだけでなく、高線量原爆被爆者のホルマリン固定、パラフィン包埋甲状腺がん試料より抽出したRNAから、まれなRET/PTC8 の93 bpのインサ−トを含むクロ−ンを単離した。更に、別の高線量被爆者の甲状腺乳頭がんにおいてこの方法を用いることにより、そのパートナー遺伝子が染色体10番長腕に存在するacyl coenzyme A binding domain 5 である新奇のRET遺伝子再配列を検出した。

結論 我々の改良したSMART RACE法は、使用量が限定された保存ホルマリン固定、パラフィン包埋組織試料の分子解析に有用であることが証明されるであろうと考える。


要約は出版社(Mary Ann Liebert, Inc.)の許可を得て翻訳した。