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放影研報告書(RR) 16-08

試験管内でクローン増殖させた原爆被爆者Tリンパ球は染色体不安定性を示さない

濱崎幹也, 楠 洋一郎, 中島栄二, 高橋規郎, 中地 敬, 中村 典, 児玉喜明
Radiat Res 172(2):234-43, 2009
要 約
電離放射線被曝がヒトにがんを誘発するメカニズムとしてゲノム不安定性が示唆されてきた。しかし、この考えを支持または反論するために必要なヒト細胞のデータは限られている。我々が以前に行った原爆被爆者のクローン性リンパ球集団(すなわち同一の安定型染色体異常を有する集団)での調査では、in vivoにおける散発的な付加的染色体異常頻度は自然発生異常頻度と比べて高くなかった。本研究では以前の調査を更に拡大し、細胞分裂を25回させた後のTリンパ球クローンに、ゲノム不安定性を示すものとして生じる様々な染色体異常を多色FISH(mFISH)法を用いて定量した。高線量被爆者(>1 Gy)2人と対照者2人から提供された血液T細胞を使用して、計66のクローン(被爆群から36、対照群から30)を得た。各クローンについて100個の分裂中期像を分析した。その結果、被爆群では3,600細胞中に計39個(1.1%)の新たに生じた付加的な安定/交換型異常(転座 + 派生染色体)が観察されたのに対し、対照群での頻度は0.6%(17/3,000)であった。被爆群における付加的異常頻度(39/3,600)は対照群(17/3,000)に比べ高かったが、統計学的に有意差はなかった(P = 0.101)。またすべての染色体構造異常(転座、派生染色体、二動原染色体、増幅、欠失、断片)についても同様に統計的有意差は見られなかった(P = 0.142)。従って、原爆被爆者のリンパ球をin vitroでクローン増殖させた今回の調査からは、染色体不安定性の存在を積極的に示唆する結果は得られなかった。