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放影研報告書(RR) 10-09

原爆被爆者の肺がん感受性における上皮成長因子受容体遺伝子(EGFR)のCA繰り返し数多型と放射線量の関連

吉田健吾, 中地 敬, 今井一枝, Cologne JB, 丹羽保晴, 楠 洋一郎, 林 奉権
Carcinogenesis 30(12):2037-41, 2009
要 約
肺がんは、世界的にがん死亡の主要な死因である。肺がんの予防は、肺がん感受性の高い個人の同定と、放射線被曝を含む環境要因と遺伝子との相互作用を理解することによって改善される可能性がある。細胞の放射線感受性を調節する上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル経路は、肺がん、特に肺腺がんに関与する一つの発がん過程である。EGFR遺伝子の第一イントロンに存在するCA(シトシン−アデニン)繰り返し数多型は、EGFR蛋白質の産生と負に相関することが示されている。そのため、EGFRのCA繰り返し数が、肺がん感受性の個人差に影響するという仮説が考えられる。そこで、我々は日本人原爆被爆者コホート内でのケース・コホート研究によって、原爆放射線に被曝した群と被曝の影響がないと考えられる群(<5 mGy)におけるCA繰り返し数多型と肺がんリスクとの関連を検討した。第一に、研究対象者を二つのグループに分け、各個人の二つの対立遺伝子のCA繰り返し数の合計が37以下と38以上の人をそれぞれShort遺伝子型、Long遺伝子型と定義して解析を行ったところ、非被曝群ではShort遺伝子型が高い肺がんリスク(特に腺がん)と有意に関連することが見いだされた。第二に、過去の放射線被曝はLong遺伝子型を持つ被爆者の肺がんリスクを有意に増加させる一方、Short遺伝子型を持つ被爆者のリスクは放射線量に伴う有意な増加を示さなかった。その結果、高線量の放射線被曝の場合には二つの遺伝子型の間でリスクの違いは見られなくなった。これらの知見は、放射線被曝に関連した肺腺がんに対する感受性の個人差を評価する上で、EGFR経路が重要な役割を果たすことを示唆している。

要約は出版社(Oxford University Press)の許諾を得て翻訳した。