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放影研報告書(RR) 11-93

原爆被爆者における癌発生率。第4部:癌発生率および死亡率の比較

Ron E,Preston DL,馬淵清彦,Thompson DE,早田みどり
Radiat Res 137S:98-112, 1994
要 約
この報告では、放射線影響研究所寿命調査(LSS)集団の原爆被爆者における癌の罹患率(本報告書では「発生」を用いる)と死亡率を比較する。発生データは広島・長崎の腫瘍登録から入手されるため、その症例確認は1958年から1987年の時期と広島・長崎の両地域に限定されるが、死亡データは1950年から1987年にわたり日本全国から得られる。これらの条件により、LSS集団では 9,014例の一次原発癌症例が同定された。一方、死亡診断書に癌を原死因として記載された死亡数は 7,308例であった。死亡症例を1958年から1987年までの期間および広島・長崎に限定した場合、癌発生例数は全体で 3,155例多く、消化器系癌では 1,262例多かった。口腔・咽頭、皮膚、乳房、男性および女性生殖器、尿路系、および甲状腺の癌については、発生例数は死亡例数の少なくとも2倍であった。発生データはいろいろな面で死亡データと異なるが、どの充実性腫瘍について有意な線量−反応関係が得られたということについての結論は、全般的に死亡データの所見を再確認させるものであった。発生・死亡データのいずれを評価した場合も、有意な過剰リスクが全充実性腫瘍、胃、結腸、肝臓(死亡診断書で原発性ないし詳細不明の肝臓癌と定義されたもの)、肺、乳房、卵巣、および膀胱の各癌が認められた。咽頭、直腸、胆嚢、膵臓、鼻、喉頭、子宮、前立腺および腎臓の癌については発生・死亡のいずれの場合も放射線の効果は有意でなかった。発生例について見られた黒色腫を除く皮膚癌の有意な過剰が死亡例では認められなかった。唾液腺ならびに甲状腺の癌も発生例では過剰を示したが、これらは従来の死亡データの解析では評価されていない。全充実性腫瘍について、発生データに基づく1シーベルト当たりの推定相対過剰リスク(ERR1 Sv=0.63)は、1950年から1987年における日本全国の死亡データに基づく相対過剰リスク(ERR1 Sv=0.45)より40%高かった。それに対応する発生データの絶対過剰リスクの点推定値は、死亡データによるものの2.7倍であった。いくつかの部位の癌については、発生と死亡のリスクの大きさの差が更に大きかった。両者の相違は、発生データにおける診断精度の高さと、乳房、甲状腺といった放射線感受性が高いが予後が比較的良い癌のデータが、死亡データに完全には反映されていないことを示している。発生および死亡データはリスク評価に相互に補足し合う情報を提供することから、両者の解析が必要である。