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放影研報告書(RR) 14-93

試験管内X線照射によるRET癌遺伝子再配列の誘発

伊藤 敬,瀬山敏雄,Iwamoto KS,林 奉権,水野照美,津山尚宏,土肥雪彦,中村 典,秋山實利
Cancer Res 53:2940-3, 19934
要 約
原爆被爆者の甲状腺癌リスクは非被爆者に比べると高いが、これは甲状腺癌と関連した何らかの遺伝子変化が電離放射線によって引き起こされることを示唆している。そこで、甲状腺癌に特徴的なRET癌遺伝子再配列の誘発、すなわち RET-PTC癌遺伝子の発生について、RET癌遺伝子の再配列を持たないヒト甲状腺未分化癌の細胞株8505C細胞に、0、10、50、100GyX線試験管内照射を行った後、逆転写PCRを用いて検索した。線量ごとに 108個の細胞をテストした結果、50GyX線照射した 108個の細胞から三つの独立した再配列を起こしたRET癌遺伝子の転写産物が得られ、100Gy処理した108個の細胞から六つの独立した転写産物が得られた。非照射の 108個の細胞または 10Gy照射した細胞からは再配列したRET癌遺伝子の転写産物は得られなかった。すべての転写産物は塩基配列が決定され、D10S170とRET配列を含むことが分かった。興味あることに、これらの転写産物には二つのタイプの再配列が含まれていた。一つは甲状腺癌に特徴的であり、もう一つは 150塩基ペア挿入物があり、生体内では普通見られない非定型的なものであった。この挿入物は D10S170のエクソンと判明した。更に線維肉腫細胞(HT1080)ではX線照射によっても RET癌遺伝子の再配列が生じ、X線照射甲状腺細胞(8505C)に見られるのと同じ二つのタイプの再配列も含まれていた。これらの結果は、被爆者も含めて放射線誘発の甲状腺癌の中に、放射線照射によって誘発された RET癌遺伝子の再配列が成長に有利に働いて生じたものがある、という仮説を支持するものである。