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放影研報告書(RR) 23-93

細胞遺伝学的および免疫学的解析により同定された1人の原爆被爆者におけるTおよびBリンパ球に分化可能な幹細胞のクローン性増殖

楠 洋一郎,児玉喜明,平井裕子,京泉誠之,中村 典,秋山實利
Blood 86(6):2106-12, 19
要 約
放射線被曝者では、末梢血リンパ球における染色体異常頻度が上昇しており、同一の血液試料や、同じ供血者から異なる時期に得た試料に、同一の核型変化が見られることもまれではない。このようなクローン性増殖の起源は、1個の未熟な幹細胞が増殖して数種の型の細胞に分化したか、あるいは1個の成熟リンパ球が生体内での抗原刺激によって増殖したかのいずれかによるものと考えられる。本研究では、末梢リンパ球のフィトヘムアグルチニン培養で安定したクローン性異常t(4;6)、t(5;13)を示した1人の原爆被爆者から、総計71個のTリンパ球コロニーおよび58個のBリンパ球コロニーを分離した。これらのコロニーの約10%(6個のTリンパ球コロニーおよび7個のBリンパ球コロニー)に同じ染色体異常が検出された。T細胞受容体あるいは免疫グロブリン重鎖遺伝子をサザンブロット解析すると、TあるいはBリンパ球コロニーはそれぞれすべて異なる再構成パターンを示した。以上の結果は、これらの染色体異常はTおよびB細胞系への分化以前の幹細胞に生じたものであり、末梢における成熟TあるいはBリンパ球の単クローン性増殖によるものでないことを明白にした。確認のため、erythroid burst-forming unit (BFU-E)コロニーの細胞を染色体着色法で調べた。t(4;6)、t(5;13)と合致する二つの転座(第5染色体と第13染色体、および第4染色体とグループCの一つの染色体の転座)が約10%の細胞で見つかった。成人の1個の幹細胞が、循環リンパ細胞および造血前駆細胞の総数の数パーセントを占めるほどの長命の骨髄系やリンパ系の子孫を派生し得ることが明らかになった。