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放影研報告書(RR) 25-93

ヒトT-リンパ球におけるX線により誘発されたHLA-A遺伝子座突然変異体において頻繁に認められた欠失型染色体異常

児玉喜明,久代淳一,平井裕子,楠 洋一郎,中村 典,秋山實利,阿波章夫
Mutat Res 309:63-72, 1994
要 約
HLA-A遺伝子座突然変異Tリンパ球を、採血直後(体内発生突然変異体)または試験管内でX線照射した後に、最近開発されたフローサイトメトリー法で分離した。その後、突然変異体をクローニングにより増殖させ、染色体レベル、分子レベルでの解析に用いた。体内発生突然変異体38個には、HLA-A遺伝子座(6p21.3)を持つ6番染色体の異常は認められなかった。これに対して、試験管内照射によって得られた突然変異体では、多くの突然変異体で6番染色体の短腕に異常が観察された(1Gy群:11/19、2Gy群:5/5)。これらの異常の大部分は欠失であり、共通する欠失部位が6p21-p23であるという特徴があった。hypoxanthine phosphoribosyltransferase 遺伝子座(X染色体)と thymidine kinase 遺伝子座(17番染色体)における放射線誘発突然変異体においては、選抜遺伝子を含む染色体欠失はまれであることが知られており、したがってHLA-A遺伝子座は放射線被曝によって染色体欠失を極めて生じやすいと考えられる。電離放射線はDNAをランダムに切断すると考えられているので、HLA-A遺伝子座で染色体欠失が高頻度に見られたのは、選択的に誘発されたためではなく、欠失を持った突然変異体の生存力が高いためと考えられる。したがってこの研究結果は、異なった遺伝子座を含む染色体欠失を持つ細胞の生存力に関して、ヒトのゲノムは極めて不均質であることを示唆している。