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放影研報告書(RR) 6-95

原爆被爆者の赤血球グリコフォリンA遺伝子座における体細胞突然変異−放射線発癌についての意義

京泉誠之, 秋山實利, Cologne JB, 田辺和美, 中村 典, 阿波章夫, 平井裕子, 楠 洋一郎, 梅木繁子
Radiat Res 146:43-52, 1996
要 約
体細胞突然変異と放射線被曝の関係を明らかにするために、グリコフォリンA(GPA)遺伝子座がヘテロ接合の広島および長崎の原爆被爆者1,226人について、赤血球ヘミ接合型突然変異体頻度をフローサイトメトリーにより測定した。統計解析をするため、GPA突然変異体頻度も放射線量も対数変換し、変数の非対称分布を標準化した。GPA突然変異体頻度はわずかではあるが有意に測定時年齢あるいは喫煙タバコ本数に伴い上昇した。また、突然変異体頻度は喫煙の影響を補正した後でも男性の方が女性よりも有意に高く、また広島の方が長崎よりも高かった。これらのバックグラウンドGPA突然変異体頻度の特徴は、以前の原爆被爆者の疫学的調査から得られたバックグラウンドの固型癌発生率または死亡率の特徴と定性的には類似していた。突然変異体頻度の線量効果をdescriptive modelを用いて解析したところ、倍加線量は約1.20Sv[95%信頼区間(CI):0.95−1.56]であり、突然変異体頻度の有意な上昇を検出できる最低線量は約0.24Sv[95%CI:0.041−0.51]であることが分かった。線量効果については性、市および被爆時年齢の有意な影響は見い出されなかった。興味あることに、GPA突然変異体頻度の倍加線量は原爆被爆者の固型癌発生率のそれと類似していた。この知見は、放射線誘発体細胞突然変異が放射線被曝後の過剰癌リスクの主要な原因になっているという仮説と一致する。更に、線量効果は、測定前あるいは測定後に癌と診断された人の方が癌になったことのない人よりも有意に高かった。これは突然変異体頻度が上昇したために癌の発症が早まったか、あるいは癌グループでは放射線感受性が高いことを示唆しているのかもしれないが、線量推定の誤差の可能性も考慮に入れなければならない。本調査で得られたこれらの所見は、GPA突然変異体頻度が放射線に被曝した人の癌リスクを反映しているかもしれないことを示唆している。