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放影研報告書(RR) 1-98

原爆被爆者の染色体異常に関するF値は広島における線量への中性子線の主たる寄与の証拠とはならない

児玉喜明, 大滝一夫, 阿波章夫, 中野美満子, 伊藤正博, 中村 典
Radiat Res 152:558-62, 1999
要 約
BrennerとSachs(Radiat Res 140:134-42, 1994)は、染色体間交換と染色体内交換の頻度の比(F値と呼ぶ)が、異なる線エネルギー付与(LET)の放射線に対する被曝の細胞遺伝学的指紋たりうると提唱した。公表された論文に基づいて、彼らは、低LET放射線の場合はF値は 10以上、高LET放射線では 6くらいであるとした。更に、原爆被爆者におけるF値が 6前後と報告されていたので、Brennerは広島における原爆放射線被曝による生物学的影響の大半は中性子線によると示唆した。しかしながら、この原爆被爆者におけるF値は、種々の線量の放射線に被曝した人たちの平均値であった。F値仮説が放射線の指紋として予言するのは低線量域に限られているので、我々は我々自身の原爆被爆者データを線量に関して解析した。被爆者のGバンド法によるデータは、DS86線量の 0.2グレイから5グレイの範囲において、F値は広島では5から8の間を変動、長崎では6前後であり、両市の間に違いは認められなかった。以上の結果は、我々のin vitro実験から得られた結果、すなわち 0.5グレイから 2グレイのX線とガンマ線、および約0.2グレイから 1グレイの2種類の核分裂中性子線のF値は一律に 6前後であったという結果と合致している。従って、更に低い線量域における影響については明らかではないが、現在の染色体異常データについて見る限りは、広島における原爆放射線の生物学的影響が主として中性子線によって生じたとする提案の証拠にはならない。