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放影研報告書(RR) 10-98

トロトラスト被投与者の腫瘍および非腫瘍組織におけるp53突然変異:肝臓における放射線発がんの細胞淘汰モデル

Iwamoto KS, 藤井志保, 倉田明彦, 鈴木 誠, 林 透, 大月祐治, 岡田雄平, 成田道彦, 高橋正倫, 細部貞廣, 土井下建治, 真鍋俊明, 畠 榮, 村上一郎, 羽田 悟, 糸山進次, 赤塚誠哉, 大原信哉, 岩崎啓介, 赤羽久昌, 藤原 恵, 瀬山敏雄, 森 武三郎
Carcinogenesis 20(7):1283-91, 1999  Oxford University Press ホームページ
要 約
ラドンから放出されるα粒子など電離密度の高い高LET放射線のような環境線源への被曝による発がんに対する懸念は、今日の保健衛生上の大きな問題である。高LET放射線被曝に起因する腫瘍の研究は、発がんの生物学的機序についての考察を大いに深めるものである。放射線造影剤トロトラストの静脈内投与後に生じる二酸化トリウム沈着に起因するα放射線への慢性的低線量率内部被曝は、発がん、特に肝臓血管肉腫および胆管癌の発生リスクを著しく増加させることが知られている。そのメカニズムとして、高LETα粒子により生じた、DNAを主な標的とする細胞障害によるものが考えられているが、正常細胞を悪性腫瘍細胞に形質転換させる過程にどのような遺伝子が関与し、また実際にどのような一連の事象が生じているのかはほとんど不明である。α放射線の生涯にわたる被曝による発がんの分子学的機序を究明するために、がん(多くは肝胆管および血管由来)が発生した20例のトロトラスト被投与者について、最もよく影響を受けるヒトがん抑制遺伝子であるp53の解析を行った。20例中、19例にp53点突然変異が認められた。更に、これらの症例の非腫瘍組織においても、頻度は低いが、p53突然変異が認められた。点突然変異の分布パターンは非腫瘍組織と腫瘍組織とで著しく異なり、悪性組織における突然変異の多くは、p53遺伝子の配列保存の度合いの高い領域に位置していた。これらの結果は、p53突然変異がトロトラストに起因する腫瘍の発生に重要な役割を果たしているが、これらの点突然変異は放射線被曝によるゲノムの不安定性から生じた二次的結果であることを示唆している。更に、p53突然変異を有する非腫瘍細胞はin situでの生存に若干有利であるかもしれないが、DNAの結合に不可欠な構造の形成を担っている領域に生じた突然変異が、細胞の完全な悪性細胞転化に必要であるかもしれない。