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解説・総説シリーズ(CR) 1-99

T細胞機能と疾患発生:将来の原爆被爆者の免疫学研究へ向けて(放影研免疫学ワークショップ報告書,1999年3月10−11日,広島)

楠 洋一郎, 林 奉権, 濱谷清裕, 京泉誠之
要 約
原爆被爆者の疾患発生における T細胞免疫に焦点を当てた免疫学ワークショップが 1999年3月10−11日に放影研において開催された。過去における原爆被爆者の免疫学研究の業績を基礎に、放影研の免疫学研究者は、被爆者においては以前の放射線被曝が ヘルパーT細胞 を Th2 に偏らせる原因として作用したという仮説を提案した。このような長期にわたるT細胞機能のバランスの偏りが、感染性疾患、自己免疫疾患およびがんなど放射線の影響が証明されている様々の疾患を最終的にもたらすのかもしれない。ワークショップの参加者はこの仮説が検証されるべきであることに賛同した。また、彼らは放影研の多次元的な研究環境が被爆者の免疫学的疾患発生機構の総合的研究を支えていることを認識した。放影研の免疫学研究者は、被爆者の血清中のサイトカインのレベルやヘルパーT細胞の表面マーカーを測定することによりこの仮説を検証する計画を立てている。彼らは、被爆者の循環器系疾患に関連する感染性病原体の調査と同じ研究対象者について、ヘルパーT細胞のバランスの解析も提案している。さらに、被爆者の甲状腺がんと肝がんの分子腫瘍学的研究が放影研で行われているので、特にこれらの腫瘍に向けた将来の腫瘍免疫学的研究が提案された。甲状腺がんと自己免疫性甲状腺疾患の共通の分子発生機構も提案された。これらの研究と長期にわたる臨床的および疫学的フォローアップにより、放射線によって誘発された免疫系の変化がどのように被爆者の疾患発生に関与しているかを明らかにできるかもしれない。