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業績報告書(TR) 22-85

循環血中造血幹細胞の増殖,分化能および放射線誘発染色体異常

雨森龍彦,本田武夫,松尾辰樹,大竹正徳,迫 龍二,朝長 優,朝長万左男,市丸道人
編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Exp Hematol 16:849-54, 1988
要 約
ヒト造血幹細胞由来単一コロニーを用いて、造血幹細胞に対する原爆放射線の影響を細胞遺伝学並びに分化・増殖能の面から検討した。対象は、末梢血リンパ球に放射線誘発性の染色体異常を高率(10%以上)に有する高線量被爆者群(T65D 100rad以上)とその対照群である。検討し得た対象例数は、被爆者群が 21名(男10、女11)、対照群が 11名(男5、女6)である。

造血幹細胞(顆粒球/単球コロニー形成細胞、GM-CFC 及び burst形成単位赤血球、BFU-E)のコロ二ー形成は末梢血 5〜10mlを用いて、Iscoveら 及び Ogawa らの方法に準じたメチルセルロース法によって行った。単一コロニーからの染色体標本の作製は、既に我々が報告した micromethod によった。

被爆者群で解析し得たコロニー数は GM-CFCで延べ 131、BFU-Eで延べ 75であり、そのうち染色体異常が認められたのは各々 15(11.5%)及び9(12.0%)であった。一方、対照群では解析し得たコロニー数は GM-CFCで延べ61、BFU-Eで延べ 41であったが、染色体異常はいずれのコロニーにも認められなかった。精密なテストにより染色体異常にGM-CFCで 0.3%、BFU-Eで 1.7%の確率で極めて有意な差が認められた。被爆者群の造血幹細胞コロニーで得られた染色体異常の核型の多くは転座型であったが、その他に欠失、マーカー染色体も観察された。また2個体において、造血前駆細胞に末梢血リンパ球にみられたような核型異常が観察された。この事実は放射線の影響がより未分化な造血幹細胞にも及んでいることを示唆している。