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業績報告書(TR) 8-86

原爆被爆者における卵巣の悪性腫瘍および良性腫瘍,広島・長崎,1950−80年

徳岡昭治,河合紀生子,清水由紀子,井内康輝,大江一彦,藤倉敏夫,加藤寛夫
編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。JNCI 79:47-57, 1987;広島医学 40:1519-31,1987
要 約
放影研寿命調査集団(LSS-E85)の女性 70,030人中に、1950−80年の調査期間中に 194例の卵巣癌罹患例のあることを確認した。また、同集団の 3,046剖検例の中に、同期間中に 106例の卵巣良性腫瘍例のあることを確認した。卵巣癌例の 66%、良性腫瘍例の 84%では、腫瘍の病理組織学的確認を行い、その組織型に基づく分類を行った。

年齢訂正卵巣癌発生率は、全症例(P<0.01)、病理組織学的確認例(P<0.01)ともに、被曝線量の増加に伴って有意の増加を示した。この線量反応は、調査期間の後半、すなわち1965−80年にのみ有意(P<0.01)であった。被爆の影響は特定の年齢について、又は年齢で補正した場合、被爆時に若年であった者ほどより高度であった。

一般に、被爆による相対危険度(100+対0rad)には年齢による差異はなかったが、被爆時年齢が20歳未満の者では、例数が少なく更に追跡調査をする必要があるが、その相対危険度は年齢の増加につれて減少する傾向があった。被爆による卵巣癌誘発の推定最短潜伏期間は 15−20年のようである。

剖検例における良性腫瘍の割合は、全症例(P<0.05)、組織学的確認例ともに被曝線量の増加につれて増大したが、後者では統計的に有意ではなかった(P>0.10)。悪性及び良性腫瘍とも、その組織型分布には被曝線量による著明な差異はなかった。

以上の結果は、卵巣の放射線障害に伴う二次的な性腺刺激ホルモンの過剰状態は、卵巣腫瘍発生の重要な病因であるとする仮説に一致するものである。