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業績報告書(TR) 19-89

放射線影響研究所におけるX線検査による原爆被爆者の臓器線量

加藤一生,安徳重敏,澤田昭三,Russell WJ
編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Br J Radiol 64:720-7,1991
要 約
原爆電離放射線による後影響についての臨床的評価の一環として、ABCC−放影研で行われたX線検査を受けた被爆者及び対照者における追加推定臓器線量についての情報を得ることを目的として本研究を行った。1970年に皮膚、赤色骨髄及び生殖腺のX線による被曝線量が推定され、以後今日に至るまでX線検査が行われるごとに通常業務として線量が追加されてきた。この線量情報はコンピューター・テープに記録保存されている。

原爆被爆者において唾液腺、甲状腺、乳腺、肺、胃、及び結腸の悪性及び良性疾患が増加していると認められることから、これらの部位についてもX線検査による電離放射線被曝線量を推定することが重要になっている。本研究では上記部位の被曝線量推定を行った。これにより、現行のコンピューター・プログラムに若干修正を加えて、成人健康調査対象者全員について各臓器の線量を遡及的に推定できる。

上記部位について電離放射線推定値が既に与えられているか、あるいは、推定値を今後与える予定の調査集団については別に詳細な報告がある。

ABCC−放影研の放射線部で行われた全検査の記録並びに使用された放射線学的技法の記録に基づきX線条件を再現し、熱ルミネッセンス線量計をヒト・ファントムの唾液腺、甲状腺、肺、乳腺、胃、及び結腸の各部位に相当する箇所に設置してX線照射を行った。これらの臓器線量はX線検査の種類ごとに推定された。Alderson ヒト成人女性ファントムは Kasei Optonix熱ルミネッセンス線量計を装着できるように改良した。線量の読み取りは、X線を1回照射するごとに Harshawモデル2000A熱ルミネッセンス読み取りシステム を用いて行われた。X線撮影及び透視検査に用いられている装置を使用して、上記線量計を装着したファントムのX線照射を行った。照射が完了すると、熱ルミネッセンス線量計をファントムからはずし、少なくとも1.5時間暗所に保存した後ルミネッセンスの測定を行った。各X線検査についてこのような測定を 2〜4回繰り返した。

6臓器の各々における被曝線量を詳細に集計し、得られた結果については、他の研究の発表したもの並びに権威のある書物に掲載された情報をできる限り入手して比較検討した。しかし、比較の対象となる発表文献は比較的少なかった。

本調査で得られた臓器線量は、1948年から現在までにABCC−放影研で成人健康調査対象者が受けたすべてのX線検査での上記各部位の被曝線量を遡及的に割り当て、各対象者について既に推定・記録され、2年ごとに更新されている皮膚、赤色骨髄、及び生殖腺線量を補完するためのものである。線量を遡及的に割り当てる作業は、現行のコンピューター・プログラムを修正して行う。

結論として、臓器線量に関する今回の研究及びその他の研究が完了すれば、総合的な線量表ができると考える。線量の程度、線量率、及び放射線エネルギーの違い、短時間の繰り返し被曝からの回復における違いなど困難な面はあるが、以上のような線量データにより、成人健康調査対象者がX線検査及び原爆により受けた線量を評価するという重要な作業が促進されることが期待される。