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業績報告書(TR) 20-89

キイロショウジョウバエの酵素座位における自然突然変異の推定

向井輝美,山崎常行,原田 光,日下部眞一
要 約
本実験の目的は、キイロショウジョウバエを用いてヌル(電気泳動)型突然変異とバンド(電気泳動)型突然変異の信頼度の高い自然突然変異率及び両者の比を推定することである。

1本の致死第2染色体(lで略記)と 1本のIn(2LR)SM1,Cy染色体(Cyで略記)を起源とする 1雌×1雄交配系統を 500育成し、各系統で 1雌×1雄の交配を続け、自然突然変異を 第2染色体に蓄積した。同時に交配の失敗に備えて 同じ1雌×1雄の子孫から 5雌×5雄の交配を行い、前者が不成功のときにのみこの子孫を次の世代の親として用いた。上と同じ実験区を別に2区作り、総計 1,500系統に突然変異を蓄積した。適当な世代数が経過した後、各系統より1匹のCy/lの雄をサンプルし、これを特定の標識遺伝子をもつPm/(標識遺伝子)雌に交配する。その子孫の(標識遺伝子)/lでは目標の7酵素遺伝子座(ADH,GPDH,GOT,MDH,HEX-C,DIP,AMY)についてヘテロ接合になっているので、これらの7遺伝子座でバンド型ないしはヌル型突然変異が起これば、これを電気泳動法により発見できる。この方法により突然変異を蓄積し、自然突然変異率を推定した。

突然変異の蓄積世代数は最初の2実験区では 約120〜130世代、最後の区で 約90世代であった。蓄積された総量は、1,620,826遺伝子座×世代である。4回(最初の2実験区)ないしは3回(第3の実験区)突然変異のテストが行われたが、バンド型突然変異は発見できなかった。最後のテストでは、44のヌル型突然変異が発見された。バンド型突然変異率(μB)の上限の 95%信頼限界は 2.28×10-6/(遺伝子座・世代)となる。ヌル型突然変異率(μn)は 2.71×10-5/(遺伝子座・世代)となり、95%信頼限界は、1.97×10-5<μn<3.64×10-5/(遺伝子座・世代)となる。

以上の主要な発見のほかにヌル型突然変異について次の結果が得られた。1)1区(KC:勝沼起源)においてl染色体でヌル型突然変異率がCy染色体よりも有意に高い値を示した。2)3区間のヌル型突然変異率について有意差が発見された。3)ヌル型突然変異について、異なった7遺伝子座間に有意差が発見された。4)ヌル型突然変異率は時と共に増減したようである。

これらの事実は、ヌル型突然変異が主としてトランスポゾンによって誘発されたと考えればよく説明できる。事実、実験終了後すべての系統が P,I,hoboエレメント をもっていることが in situ hybridization法 によって明らかにされた。

本実験ではバンド型突然変異は発見できなかったが、本実験前の蓄積実験の結果と有意差がなかったので、これと本実験の結果をプールして 4/(4,732,424)=8.4523×10-7/(遺伝子座・世代数)となり、その 95%信頼限界は、2.30×10-7<μB<2.17×10-6/(遺伝子座・世代)となった。ヌル型突然変異率とバンド型突然変異率の比は 約30となるが、この比はトランスポゾンの種類と頻度により変化すると考えられる。