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業績報告書(TR) 7-90

染色体異常と強度脱毛のデータに基づくDS86線量計算方式の確率誤差に関する調査

Sposto R,Stram DO,阿波章夫
編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Radiat Res 128:157-69, 1991
要 約
広島・長崎原爆被爆者の末梢血培養リンパ球に認められる染色体異常を有する細胞の比率について解析した結果、1)DS86線量を用いた線量反応関係の勾配率が、被爆後強度脱毛を呈した者の方が、脱毛のなかった者より有意に高いこと、2)各個人間の線量反応に異質性がないと仮定した場合、染色体異常を有する細胞の比率は、高線量被曝者において、予想よりかなり大きなばらつきを示すことがわかった。これらの影響は、DS86線量計算方式における確率誤差にある程度負うところがあるので、これをDS86線量計算における確率誤差の大きさの推定に用いることができると考えられる。しかし、上記の影響は放射線感受性における個人差によって生じた可能性もある。すなわち、被曝線量が同じでも、強度脱毛発生に関する放射線感受性が高い者は、染色体異常もまた誘発されやすいという可能性があるために、この推定作業は複雑になる。

本報では、以下に説明する一連の線量誤差モデルを用いた解析を行い、線量計算方式にどの程度の確率誤差があれば、強度脱毛の有無に見られる線量反応の差異の「すべて」を、あるいは染色体異常を有する細胞の比率にみられる過大なばらつきのすべてを説明し得るかを推定した。ここでは、これらの影響は線量の確率誤差によってのみ生じると仮定した。線量計算誤差モデルを幾つか用いて、これらのデータの解析を行い、線量計算における確率誤差が、真の線量の 45%から50%の範囲であれば、強度脱毛の有無による2群間の線量反応の差は完全に説明できるという結論に至った。また、線量計算における誤差の範囲がこの程度であれば、染色体異常を有する細胞の比率にみられる過大なばらつきもまた説明できる。線量計算における確率誤差が 40%程度でも、放射線感受性に個人差はないという仮定と一致する。こうして求めた線量計算における誤差と、他の研究者が独自に求めたものとの比較を示す。更に、放射線感受性の差による寄与は極めて小さいことを示す知見を紹介し、これらの影響は、線量計算における確率誤差によって生じた可能性が高いことを示す。今回試みたような解析を、様々な指標について行えば、DS86における線量計算確率誤差の大きさに関して理解を深め、放影研データに基づく線量反応関係のより正確な推定が得られることになると思われる。