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業績報告書(TR) 9-91

白血病の主要病型の誘発における原爆放射線の影響の差違:修正診断システムおよびDS86に基づく,寿命調査コホートを含むオープン都市症例の解析

朝長万左男,松尾辰樹,Carter RL,Bennett JM,栗山一孝,今中文雄,久住静代,馬淵清彦,蔵本 淳,鎌田七男,市丸道人,Pisciotta AV,Finch SC
要 約
原爆傷害調査委員会 および その後継団体の放射線影響研究所は、1945年から1980年にかけて爆心から半径9km以内で被爆したオープン都市原爆被爆者集団に発生した 766例の白血病報告を収集した。そのうち、寿命調査(LSS)コホートで発生したのはわずか 249例であった。本報告書では、LSSコホートデータと共に白血病登録の追加データ 517例を活用して、原爆放射線被曝が白血病の主要病型に与える影響を調査した。登録白血病症例の血液標本で入手可能なものはすべて検討した。フランス、米国、英国(FAB)グループの分類法とその他の改良された診断技法を用いて、症例を成人T細胞白血病(ATL)などの新しい疾患を含む 21区分に再分類した。解析を行うため、これらの区分を以下のように大きく4つのグループに集約した。(1)急性リンパ性白血病(ALL)、(2)骨髄異形成症候群を含む急性骨髄性白血病(AML)、(3)慢性骨髄性白血病(CML)および(4)ATLを含む「その他」の病型である。放射線影響の解析は1986年改訂線量体系に基づいて行った。

4つに分けたグループのすべてにおいて、発生率は被曝線量が高くなるにつれて上昇した。放射線の影響はAMLおよび「その他」に比べ、ALLおよびCML発生率に対して有意に高かった。50mGy以下の低線量被曝の場合でも、ALLおよびCML症例が過剰発生したが、AMLの過剰発生は>50mGy、少なくとも 229mGyに被曝しなければ認められなかった。こうした影響の差は、発生率がバックグラウンド・レベルに戻る(あるいは向かう)につれ、消滅した。

最も低い2つの線量群(1−49mGy および 50−499mGy)において、被爆者集団が高齢化するにつれ、白血病の推定発生率は一定、もしくはわずかに上昇した。ところが最も高い2つの線量群(500−1,499mGy および ≧1,500mGy)においては、推定発生率はすべての白血病型について減少した。≧1,500mGy線量群において、AMLおよびALLの過剰が最終調査期間(1976−80年)を通して認められたが、CMLおよび「その他」の過剰は認められなかった。

非被爆者では、広島に比較して、長崎のCML推定リスクはAMLに比べ有意に低く、「その他」については有意に高かった。これはATL症例は長崎でしか認められなかったためである。広島における白血病発生率(ATLを除く)が一般的に高いことは、バックグラウンド発生率における両市間の差により説明できると思われる。

また非被爆者群においては、年齢が高い者(原爆時年齢16−35歳 および 36歳以上)の発生率は若年者(被爆時年齢0−15歳)のそれと比較して、AMLに比べALLでは低かったが、CMLおよび「その他」では高かった。ALLのリスクは被爆時年齢にかかわりなく一定であったが、一方AMLのリスクは被爆時年齢の上昇に応じて高くなり、CMLおよび「その他」の場合は更に高くなった。

ALL、AMLおよびCMLの発症までの時間は線量が高くなるにつれ短くなっているが、この短縮率はAMLに比べ、ALLおよびCMLの方が高かった。高線量群におけるこうした差は、原爆誘発白血病においてAMLよりALLおよびCMLの方が潜伏期間が短いことを示している。