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業績報告書(TR) 3-92

甲状腺の未分化癌とp53遺伝子の変異との関係

伊藤 敬,瀬山敏雄,水野照美,津山尚宏,林 奉権,林 雄三,土肥雪彦,中村 典,秋山實利
編集者注: この報告書に基づく論文は次に発表された。Cancer Res 52:1369-71, 1992 ; Jpn J Cancer Res 84:526-31, 1993
要 約
甲状腺腫瘍は、ゆるやかに増殖する分化腺癌から急速に増殖する未分化癌まで多様な像を呈する。病理組織学的には、未分化癌は分化癌から発生するという証拠がある。さらに、遺伝子に起こった何らかの異常がこれらの変化に関連するのではないかと疑われる。この研究において、パラフィン包埋された原発腫瘍および培養細胞株を用い、エクソン5−8の PCR を増幅した後、直接、塩基配列決定法によりp53遺伝子の突然変異が検出された。

分化型乳頭腺癌10症例において、エクソン5−8の突然変異は認められなかったが、未分化癌では、7症例中6症例が塩基置換による突然変異を有することが分かった。塩基配列決定法により、コドン135(TGC→TGT)、141(CCC→CCT)、178(CAC→GAC)、213(CGA→TGA)、248(CGG→CAG,CGG→TGG)、273(CGT→TGT)において突然変異を確認した。この突然変異のスペクトラム(7/8においてG:CからA:Tへの転位)は、自然発生した腫瘍に認められるp53突然変異の特徴かも知れない。

これらの結果は、ヒトの甲状腺における分化癌から未分化癌への転化に、p53の突然変異が重要な役割をはたしていることを強く示唆する。