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研究の概要

放影研の調査プログラムは、広島・長崎の原爆被爆者に対する放射線の影響を調査することに重点を置いています。被爆者とその子供の健康状態および死亡率に関する疫学調査ならびに臨床調査のために、幾つかの固定集団および副次集団が設定されました。また、種々の所見を解釈するため、疾患誘発の機序について理解を深めるために、放射線生物学、免疫学、遺伝学、分子疫学の分野において実験を基にした調査研究を行っています。
寿命調査
寿命調査は、あらゆる年齢層の男女で構成される一般集団から抽出した大きな集団について実施されています。この調査は、正確に計算された広範囲にわたる線量域に基づいて実施されており、疾患の発生および死亡が正確に記録されています。調査結果は慎重に評価され、報告されています。このような特徴により、寿命調査は放射線リスクを設定する上で世界で最も有益な疫学調査となっています。放影研では、すべての調査協力者について、生涯にわたる追跡調査を行い、がんの発生率、がんによる死亡率、およびがん以外の疾患のリスクと放射線量との関連を調べています。
成人健康調査
成人健康調査は寿命調査の副次集団における臨床調査です。原爆被爆者を対象とした健診が2年に1度行われており、高齢化する集団の健康状態を継続的に調べています。更に、将来の解析のために受診者から同意を得た上で血液試料を採取しています。この調査では、がん以外の疾患の放射線に関連したリスクを確認し、加齢および放射線に関連する生理学的変化を調べています。がん以外の疾患の放射線との関連およびリスクを更に正確に定量化するために、被爆者の生涯を通じてこの調査は継続されます。
原爆被爆者の子供(F1)に関する調査
親の被爆による遺伝的影響があるかどうかを調べるために、被爆者の子供を対象とした調査を行っています。初期に行われた出生時の障害に関する調査では、親の放射線被曝の影響は認められませんでした。その後、被爆者の子供の死亡率とがん発生率、染色体や血液蛋白質の異常に関する調査も行われましたが、これまでのところ親の被爆の影響は観察されていません。最近は、死亡率・がん発生率の追跡調査の継続と、遺伝子DNAの調査が行われています。また新たに2002年からは、出生時には観察されないが中年以降になって生じる生活習慣病(高血圧や糖尿病など)の発症に関する臨床調査が行われました。この調査は、被爆二世団体の協力を得て、こちらから健診をお願いした方のうち、ご本人から受診の意思を確認できた方、約12,000人を対象として、約4年間かけて行われました。調査結果については以下の報告書をご覧ください。
被爆二世健康影響調査報告(平成19年3月)[PDF: 429KB]
なお、被爆二世臨床調査は、2010年11月より、前回とほぼ同じの12,000人を対象に健診が継続されています。
胎内被爆者調査
胎内被爆者調査は、特殊な被爆者集団、すなわち原爆投下時に胎内にいた人(約3,600人)の生涯にわたる健康状態を調べる、他に類を見ない調査です。この集団の放射線影響に対する感受性が、最も若い年齢層の被爆者集団(0−5歳で被爆)と同程度であるか、またはそれ以上であるかはまだ分かっていません。この集団について、中年から老年を通して死亡までの追跡調査を継続することにより、多くの知見が得られると思われます。
放射線生物学調査
放射線生物学調査では、放射線反応に関与する物理的現象(部位、エネルギー沈着の種類および量)、生物学的反応(損傷の結果、修復、調整過程)、および内因性因子(年齢、性、ホルモン、食事)の複雑な相関の結果を解明することを目標としています。乳がんおよび甲状腺がんの原因となるか、あるいはこれらの疾患に罹りやすくするDNAの指標を調べることに特に重点を置いています。放射線被曝の結果として発生しているかもしれないDNAの変化を識別するために、血液または組織試料の検査に専門的な特殊技術を使用しています。
免疫学調査
原爆放射線が被爆者の免疫系にある種の変化を引き起こしたという証拠が出てきています。免疫系の細胞の特徴を分析するために用いられている最新の手法を利用し、これらの変化をより詳しく解明し、健康に及ぼす影響について検討しています。
分子疫学調査
身体的変化として容易に確認できない放射線誘発影響(すなわち表現型レベルでの影響)が、DNAにおける分子変化(すなわち遺伝子型レベル)から認められるかもしれません。放影研では、この新たな分野の研究を進め、臨床調査によって収集された血清、および疫学追跡調査対象者の剖検や手術から得られた組織を調べて、疾患の原因と発生機序を更に詳しく解明しようとしています。
細胞遺伝学調査
細胞遺伝学調査では、染色体の構造上の損傷の種類と量を調べることにより、放射線被曝(生物学的線量)を推定することができます。
統計学
統計的解析は、疾患の発生率および他の健康影響に関するデータに固有の可変性を考慮して、リスク因子と疾患の関係を調査する手段を提供します。統計学プログラムでは主に、放射線影響の確認と定量化をするために疾患発生率と死亡率についての数学的モデルを応用してリスク評価を行います。更に、放影研の統計部研究員は調査の企画やデータ解析に関して他の放影研研究員と協力し、また方法論を研究して疾患データや健康リスクの解析のより良い方法を開発しています。
原爆放射線量推定
放射線被曝のリスクを評価するためには、受けた放射線の線量を知る必要がありますが、被爆者個人の線量を直接測定したものはありません。このプログラムは、被爆者の線量推定値の提供にかかわるものです。放射線被曝の基本的情報は、原爆物理学の最新の理解と、異なるタイプの物質(コンクリート、花崗岩、銅など)の中に原爆放射線に被曝した細かい痕跡を発見することができる高感度な測定の結果に基づいています。この情報と被爆者との面接で分かった被爆地点および遮蔽状態に関係した過去のデータを組み合わせて、被爆者個人の線量を推定します。このプログラムはまた、被爆者の線量推定における不確定要素、およびリスク評価におけるこれら不確定要素の影響をより深く解釈するための方法を開発することにもかかわっています。