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がんの発生機序

なぜ放射線は被爆者において過剰にがんを引き起こすのだろうか?

がんは、正常細胞の恒常性を保とうとする制御能力が失われた結果、細胞が増殖し続け、塊となって周囲の正常な組織を侵し、本来の働きをできなくしてしまう病気の総称です。もしそれを放置しておくと、増殖はとどまるところがなく、その結果、個体は死に至ります。正常細胞をがん細胞へと変化させる発がん過程は、多段階にわたることが一般に認められています。つまり、ただ一つの出来事が細胞に起こっただけでは、正常細胞をがん細胞へと変えるには十分ではないのです。ちょうど適切な種類の異常が適切な数だけ積み重なった時に、初めてがんが発生するのです。普通の生命の営みの過程自体(例えば、酸素の消費、喫煙、紫外線にあたることなど)が細胞に様々な傷をつけ、それが徐々に、その人が生きている間ずっと蓄積されます。このような理由で、ほとんどのがんが人生の後半に発生しています。これらの重要な段階の特徴はまだ完全には分かっていませんが、それらしいと思われるものは多くあります。
悪性腫瘍になるまでの主な段階に、DNA( ヒトゲノムの4段階 を参照)の変化があります。具体的に言えば、増殖、修復、エネルギー産生、細胞老化、細胞死など、正常な細胞活動を制御する重要な遺伝子が影響を受けます。ゲノムを構成している遺伝子はDNAの一部ですが、細胞が様々な機能を遂行するために必要とする蛋白質を生成するための情報を含んでいます。電離放射線は、分子結合を破壊するエネルギーを与える能力を持っているので,それによって、これらの遺伝子に傷をつけると考えられています。すなわち、その結果として、遺伝子がこわれて、正しく働かない遺伝子産物が生成されるようになります(すなわち、突然変異が生じます)。いったん遺伝子に電離放射線によって傷がつくと、細胞はそれを修復するかもしれませんが、死ぬかもしれませんし、傷を持ち続けるかもしれません。傷を持ち続ける場合、傷がついた遺伝子によっては、細胞が新しい特徴を帯び、その周囲の傷がついていない細胞や修復した細胞より生存上有利になることもあります。そのような細胞は、がんになる過程に一段階近づいたと考えることができます。時間の経過と共に、他の変化が発生し、蓄積されます。そのような出来事の数が限度を超えるとがんが発生します。
肺がん、胃がん、女性乳がん、大腸がんなどよく見られるがんについていえば、放射線被曝によって、これらの細胞に起こる一連の過程のある時点で、余分にもう一段階の過程が加わるために、がんが発生しやすくなるように思われます。もし、放射線に被曝していなかったら、これらの細胞はがんにならないですんだことでしょう。こう考えると、被曝した人にしか生じないがんというものがないわけも理解できます。また、なぜ被爆者のがんは、被爆していない人たちより百倍も千倍も多いわけではないのかも、これで説明できると思います。通常、死なないですむ量の放射線を全身にあびた場合、がんにかかるリスクは最大でも5倍くらいです。
組織による放射線感受性の違い
腫瘍促進遺伝子を活性化するもの
腫瘍抑制遺伝子を不活性化するもの