• 市民公開講座

長崎で「第4回市民公開講座」を開催

放影研保存試料の活用について活発な議論

放影研は2014年2月22日(土)午後2時から4時半まで、長崎原爆資料館ホールにおいて、第4回長崎市民公開講座を開催した。この公開講座は、原爆放射線の健康影響に関する放影研の長年にわたる研究の成果について、原爆被爆者や被爆二世の方々をはじめ一般市民の皆様に情報を提供し、交流を促進することを目的としている。

このたびの市民公開講座は、「放影研保存試料の活用を考える」をテーマに、昨年4月に設置した生物試料センターが保存する試料の、共同研究も含めた活用法に関して、長崎の一般市民の方々から意見を伺うために企画したものである。パネルディスカッション形式で行った今回の公開講座には100人を超す市民の皆様に参加いただいた。

開会に当たり、寺本隆信業務執行理事が、長崎市民の皆様との交流を目的とする公開講座への参加に謝意を述べた。次に、大久保利晃理事長が、「長崎と広島の原爆被爆者から提供していただいた多くの試料を、原爆の健康影響研究はもとより、それ以外の放射線影響研究を含めた医学研究の進歩に資するよう最大限に活用することが、被爆者のご協力にお応えする最善の方法だと信じる」との趣旨説明を行った。

最初の演者は兒玉和紀主席研究員・生物試料センター長が務め、「放影研保存試料の現状と活用について」と題して、放影研で保存している被爆者の試料について詳しく述べながら、生物試料センターの概略を解説した。2人目の演者の永山雄二長崎大学原爆後障害医療研究所所長は「放射線健康影響研究における保存試料の役割」の題目で、被爆者から頂いた試料を基に実施した研究成果は本来、被爆者に還元されるべきであるが、調査研究に時間を要するため次世代の人々に還元することになると述べ、また長崎大学での保存試料の取り扱いについての取り決めや方法について分かりやすく説明した。

2人の演者による基調講演の後、パネリスト(前述の演者2人と、大久保理事長、片峰 茂長崎大学学長、川野浩一長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会議長、馬場宣房長崎新聞社論説委員長)によるパネルディスカッションが行われた。座長を務めた片峰博士の進行で、パネリストが放影研の生物試料の意義についてそれぞれの見解を述べた。馬場氏は、放影研を社会的な側面と歴史的な側面から見た考えを述べた。川野氏は、被爆者の立場から見た放影研の役割と試料の持つ歴史的、社会的意義について述べた。

続いて、会場に詰め掛けた市民の皆様との質疑応答が行われ、「生物試料での研究を進めて被爆者に還元してほしい」という要望や、「放影研の様々な研究で被爆者を救済すること、また核兵器廃絶にも貢献すべき」、「放影研が更に信頼される機関として認知されるように努力することも大切」など、多くの意見が出された。

最後に寺本業務執行理事が、市民公開講座への参加のお礼と、貴重なご意見を頂いたことへの謝辞を述べて、公開講座は終了した。