寿命調査 第7報

TR番号 15-73

予研-ABCC寿命調査:第7報 原爆被爆者の死亡率、1970-72年および1950-72年

Moriyama IM, 加藤寛夫

 

編集者注:

雑誌には掲載されていません。

 

要 約

本報では、前報までの資料に 1971-72年の資料を追加して、予研-ABCC寿命調査の調査対象における最新の死亡率を示してある。さらに前報以来有意な変化が起こったかどうかをみるため資料の検討を行った。また、本報には全観察期間である 1950-72年の資料もあわせて示してある。

追加観察期間においては、重要な新しい所見は認められなかった。若干の例外を除けば追加された新しい資料は、原爆放射線の遅発性影響について以前に報告されてきた所見をいっそう補強するものであった。 

寿命調査対象者の死亡率は、その後も低い傾向を示している。最近の2年間に認められた死亡率は、おそらく過去22年間の調査で認められたものよりも低い。原爆時年齢が 10-19歳であった男性を除いては、この対象群における最近の死亡率は、それに対応する全国死亡率よりも有意に低いようである。

白血病による死亡率は年とともに急速に下降しているにもかかわらず、現在でもきわめて高い値を示している。1970*72年においては、100rad以上の線量を受けた被曝者における白血病による死亡率はきわめて低い水準に達したが、広島では 0-9radの比較群に比べて 5%の危険率でなお有意差を示している。

高線量を受けた被曝者群(200rad以上)における白血病を除く全悪性新生物による死亡率は、0-9rad群のそれより高い。これは、最近の資料のみならず全観察期間にも見られた。しかし、この種の悪性新生物による死亡率が、100rad以上の線量を受けた群に上昇しているようには見えない。

全観察期間の資料において興味深いことは、胃を除く消化器の癌による死亡率が、高線量被曝群に高いことである。また、最近の観察期間においては、200rad以上の群における胃癌の死亡比と対照群(0-9rad群)のそれとの間に差異のあることが統計的に示唆されている。(P=.096)しかしながら、現在まで行ってきた病理学的調査では、放射線被曝が消化器の癌の原因であるという証拠は認められていない。今後の胃癌による死亡率の変化については、注意が必要である。

癌の例数が相対的に少ないので、一般に特定部位の死亡比の変動がかなり大きい。さらに今後2年間の資料を追加すれば、今回の観察に認めた死亡比や相対的危険度がいっそう確定的なものになるであろう。

高線量被曝群における“その他の新生物”による死亡率の上昇は統計的に有意である。“その他の新生物”には、放射線被曝との関係がすでに認められた特定部位の癌が含まれる。しかし、この分類に含まれる死亡には、部位不明の悪性新生物が多く含まれていることに注意する必要がある。

戻る