LSS第12報 詳細ながん死亡率データおよび付録表

                                 1996年9月13日

 これは、放影研が原爆被爆者の寿命調査集団におけるがん死亡率に関して発表したLSS
第12報第1部と一緒に配っているディスクファイルの説明です。Pierceらの論文(Radiation 
Research 146:1-27,1996)には、放影研が行ったこれらのデータの解析結果がいくつか発
表されています。ここに提供するデータは、二つの詳細なデータファイルを含みます。まず、
これらのデータをどのように用いたらLSS第12報にある主な結果を再現できるかについて
情報を入れた解析スクリプトファイル、そして発表論文に掲載できなかった詳細な部位別の
結果が得られる付録表が含まれています。

 放影研の解析では、各臓器線量に対してそれぞれ人年計算が行われました。ここにある固
形がんの表は結腸線量を用いて作成されたものです(r12canc.dat)。他の臓器線量に基づい
て解析が行えるよう、都市および被爆時年齢別の臓器線量の補正係数表をつけています
(ds86adjf.dat)。 ここにある白血病、リンパ腫および骨髄腫の表は骨髄線量を用いて作成
されたものです(r12leuk.dat)。

 放影研が提供する主なファイルは以下の通りです。

        r12canc.dat     主ながん部位すべてに関するデータの詳細な人年表(DOSテキストファ
                        イル)
        r12leuk.dat     白血病およびその他の造血器がんに関するデータの詳細な人年表(DOS
                        テキストファイル)
        ds86adjf.dat    結腸線量推定値を他の臓器線量近似推定値へ変換するために用いるこ
                        とができる補正係数(DOSテキストファイル)
        r12supp.xls     18のがん区分における詳細な結果の付録表54個を含むワークシート

 固形がんおよび白血病のデータセットは、人年、症例数、および個々の被爆者に関するデ
ータの要約の詳細な数値表です。解析集団には86,572人の被爆者が含まれています。この
総数にはDS86遮蔽カーマ推定値が4 Gyを超える被爆者も含まれています。データセットは、 
LSS第12報の幾つかの解析でなされているように、合計遮蔽カーマ推定値が4 Gyを超える
被爆者を外し易いように構築されています。

 個々の被爆者に関するデータは、都市、性、被爆時年齢、暦年、線量で層化し、これらの
データセットを作成しました。白血病データセットにある線量区分は重み付けされた骨髄合
計線量に基づいており、固形がんの表にある線量区分は重み付けされた結腸合計線量に基づ
いています。これらの重み付けされた線量は、ガンマ線量に中性子線量の10倍を加えて計
算しました。先ほども述べたように、LSS第12報のその他の部位別解析は、適切な臓器線
量別のデータ区分における基本様式と同じ様式のデータセットに基づいています。これら全
てのデータセットを配布することは実際的ではありません。しかし、上に述べたように、デ
ィスクには、他の臓器線量推定値計算に使える都市・被爆時年齢別の変換係数が入っており、
他の臓器線量を算出する方法をわかり易く説明したコマンドスクリプトも入っています。

 データファイルそれぞれの内容についての詳細な文書に加え、出版された報告書の解析に
用いたモデルへの当てはめを行うためのEPICUREコマンドスクリプトとログファイルもデ
ィスクに入っています。これらのスクリプトにはまた、データの読み方および結腸線量推定
値を他の臓器線量推定値へ変換する方法が説明してあります。

 このデータを研究論文や業績報告書など、何らかの出版物のための解析の基盤として使  
用する場合には、原稿に謝辞を加えなければなりません。謝辞は以下の通りとします。


    用いたデータは、広島および長崎の放射線影響研究所(放影研)から入手したものである。
    放影研は、日本の厚生労働省ならびに米国の学士院を通じてエネルギー省により資金提供
    を受けている公益法人である。この報告書に示した結論は著者のものであり、必ずしも
    放影研またはその資金提供機関の判断を反映するものではない。


 これらのデータを用いて書いた論文の別刷りを1部、下記宛にお送りください。

    〒732-0815
    広島市南区比治山公園5-2
    放射線影響研究所
    情報技術部 図書資料課 資料係


LSS第12報 がん死亡率データのファイルのフォーマット

ファイル名  レコード数  レコード長  変数    ファイルのサイズ(バイト)
r12canc.dat   16,612        281      53              4.64MB
r12leuk.dat   16,947        169      25              2.88MB

ファイルのフォーマット:3.5インチ、1.4 MBのMS-DOSにフォーマットしたフロッピーデ
ィスク。ファイルはDOSテキストファイルで、PKZIPを使って圧縮してあります。

作成日:1996年9月13日

 ファイルは両方とも、最初の七つの変数は、表を定義するため用いた交差分類のインデッ
クスとなっており、次の13の変数(次の表の観察対象者で始まる)は各セルにおける観察
対象者の人年と人数、カーマ、線量、年齢および期間を説明する要約変数です。 r12canc.dat
ファイルでは、結腸線量を用いて線量、重み付けした線量、補正線量を計算しました。 
r12leuk.datの表では、これらは骨髄線量を用いて計算してあります。

    変数          説明                                欄

1   都市                                             1 - 3
                1 - 広島
                2 - 長崎

2   性                                               4 - 6
                1 - 男性
                2 - 女性

3   遮蔽カーマ合計                                   7 - 9
                1 - 有
                2 - 無

4   被爆時年齢区分インデックス                      10 - 12
               1     0 -  4    9   40 - 44          
               2     5 -  9   10   45 - 49
               3    10 - 15   11   50 - 54
               4    15 - 19   12   55 - 59
               5    20 - 24   13   60 - 64
               6    25 - 29   14   65 - 69
               7    30 - 34   15   70+
               8    35 - 39

5   到達年齢区分インデックス                        13 - 15
               1     0 -  4   12   55 - 59
               2     5 -  9   13   60 - 64
               3    10 - 15   14   65 - 69
               4    15 - 19   15   70 - 74
               5    20 - 24   16   75 - 79
               6    25 - 30   17   80 - 84
               7    35 - 39   18   85 - 89
               8    35 - 39   19   90 - 94
               9    40 - 44   20   95 - 99
               10   45 - 49   21   100+
               11   50 - 54


6   RBE値10で重み付けをした臓器線量区分             16 - 18
    (r12canc.datでは結腸線量、r12leuk.dat
    では骨髄線量)
               1    0     -  0.005     8   0.75 - 1    
               2    0.005 -  0.02      9   1    - 1.5
               3    0.02  -  0.05     10   1.5  - 2
               4    0.05  -  0.1      11   2    - 2.5
               5    0.1   -  0.2      12   2.5  - 3
               6    0.2   -  0.5      13   3    - 4
               7    0.5   -  0.75     14   4+

7   期間インデックス                                19 - 21
               1    October 1, 1950 - December 31, 1952
               2    January 1, 1953 - December 31, 1955
               3    January 1, 1956 - December 31, 1960
               4    January 1, 1961 - December 31, 1965
               5    January 1, 1966 - December 31, 1970
               6    January 1, 1971 - December 31, 1975
               7    January 1, 1976 - December 31, 1980
               8    January 1, 1981 - December 31, 1985
               9    January 1, 1986 - December 31, 1987
               10   January 1, 1988 - December 31, 1990

8   観察対象者                                      22 - 26
        セルの人年計算に含まれた人数

9   人年                                            27 - 37
              各セルにおいて観察対象者となったことの
              ある人全員の人年合計

10  追跡期間の最初のセルの人数                      38 - 46
              この変数は、表の中のあるセルにおける
              追跡調査を開始した人の数です。最初の
              期間区分より後のセルは全部0となります。
              この値を合計すると、観察対象となった
              ことのある人全体の実数がでます。これは、
              人で重み付けをした線量と年齢の平均を
              出すのに用いることもできます。
              
11  到達年齢                                        47 - 55
              各セルにおいて観察対象となったことの
              ある人全体についての、人年で重み付けを
              した平均到達年齢

12  被爆時年齢                                      56 - 64
              各セルにおいて観察対象となったことの
              ある人全体についての、人年で重み付けを
              した平均被爆時年齢

13  被爆後経過年数                                  65 - 73
              各セルにおいて観察対象となったことの
              ある人全体についての、人年で重み付けを
              した平均被爆後経過年数

14  年                                              74 - 83
              各セルにおいて観察対象となったことの
              ある人全体についての、人年で重み付けを
              した平均暦年

15  ガンマ線遮蔽カーマ(mGy)                       84 - 92
              人年で重み付けをした平均ガンマ線
              遮蔽カーマ。

16  中性子遮蔽カーマ(mGy)                         93 - 101
              人年で重み付けをした平均中性子遮蔽
              カーマ

17  ガンマ線臓器線量(mGy)                         102 - 110
              人年で重み付けをした平均ガンマ線臓器
              線量。r12canc.datでは結腸線量で、
              r12leuk.datでは骨髄線量。
              
18  中性子線臓器線量(mGy)                         111 - 119
              人年で重み付けをした平均中性子臓器
              線量。 r12canc.datでは結腸線量で、
              r12leuk.datでは骨髄線量。

19  重み付けをした臓器線量(Sv)                    120 - 133
              RBE 10で重み付けした臓器線量
              (ガンマ線 + 中性子線量の10倍)。
              r12canc.datでは結腸線量で、
              r12leuk.datでは骨髄線量。

20  補正・打ち切りをした結腸線量(Sv)              134 - 147
              確率的線量推定誤差の影響を補正し、
              合計遮蔽カーマを4 Gyで打ち切って
              得られた重み付けをした臓器線量。 
              r12canc.datでは結腸線量で、
              r12leuk.datでは骨髄線量。

 データセットは両方とも、以上の変数の後に症例数変数が続き、表の各セルの特定の死因
による死亡数が分かります。次にあげる症例数変数はすべて、r12canc.datファイルに入って
います。

    死因            ICD(第9回改訂版)          欄
21  全死亡              全コード            148 - 152
22  全がん              140 - 208           153 - 157
23  白血病              204 - 208           158 - 161
24  白血病以外のがん    140 - 203           162 - 165
        白血病以外のがんによる総死亡数
25  固形がん            140 - 199           166 - 169
        すべてのがんによる死亡数から白血病、骨髄腫、
        悪性リンパ腫による死亡数を引いた、固形がんの総死亡数
26  舌                     141              170 - 173
27  咽頭                146 - 149           174 - 177
28  消化器系            150 - 155(0,1,2)    178 - 181
                        156 - 159
29  食道                   150              182 - 185
30  胃                     151              186 - 189
31  結腸                   153              190 - 193
32  直腸                   154              194 - 197
33  肝臓                155 (0,1,2)         198 - 201
        原発肝臓がんによる死亡数と原発性、二次の区別がなされていない肝臓がんに
        よる死亡数の両方を含みます。
34  胆嚢                   156              202 - 205
35  膵臓                   157              206 - 209
36  その他の消化器      152,158,159         210 - 213
37  呼吸器系            160 - 165           214 - 217
38  鼻                     160              218 - 221
39  喉頭                   161              222 - 225
40  肺                     162              226 - 229
41  骨および結合組織       170              230 - 233
42  黒色腫以外の皮膚がん   173              234 - 237
43  女性乳房               174              238 - 241
44  子宮                180 - 182           242 - 245
45  子宮頚部               180              246 - 249
46  卵巣                   183              250 - 253
47  前立腺                 185              254 - 257
48  泌尿器系            188, 189            258 - 261
49  膀胱                   188              262 - 265
        出版された報告書には膀胱がん死亡数が118であると記載されているが、実際
        は119です。
50  腎臓                189 (0,1)           266 - 269
51  脳および中枢神経系  191,225.0           270 - 273
                        237.5,239.6
        悪性腫瘍と良性腫瘍の両方を含みます。腫瘍の総数(78)はLSS第12報に記
        載されている数(95)よりも少ないですが、これは死亡診断書に原死因が脳腫
        瘍または中枢神経系腫瘍であると記載されているものだけに限定したためです。
        報告書に書かれている症例数が多いのは、死亡診断書に脳腫瘍または中枢神経
        系腫瘍が副死因としてのみ記載されている17人が含まれているためです。死亡
        診断書に中枢神経系腫瘍として記載されているものが5症例しかないので、こ
        こでは脳腫瘍と中枢神経系腫瘍を区別していません。報告書に記載してある内
        訳は、特別な検討に基づいたものです。(脳と中枢神経系のがんに関する詳細
        な報告書がまもなく完成する予定です。)
52  悪性リンパ腫        200 - 202           274 - 277
53  多発性骨髄腫           203              278 - 281


 r12leuk.datの表には、次に挙げる症例数変数のみが入っています。

    死因          ICD(第9回改訂版)           欄
21  全死亡              全コード            148 - 152
22  全がん              140 - 208           153 - 157
23  白血病              204 - 208           158 - 161
24  悪性リンパ腫        200 - 202           162 - 165
25  多発性骨髄腫           203              166 - 169


これらのファイルにあるデータとLSS第12報の記述内容の違い

 これらのデータセットと出版された報告書のデータセットには少し違いがあります。特に、
出版された報告書では、最初の三つの暦年期間は始まりが1950年10月10日、1954年1月
1日と1958年1月1日となっています。しかし、ここで示している表では、暦年期間は始
まりが1950年10月10日、1953年1月1日と1956年1月1日で、いずれも終わりが1960
年12月31日となっています。これらの両方の区分が出版された報告書の最終解析で用いら
れました。

 暦年期間のわずかな変更に加えて、脳腫瘍死亡の区分の定義が論文とは異なっており、出
版された報告書に記載されていない膀胱がん症例1例が表には含まれています。この「追加」
症例は論文で膀胱がんの最終解析に用いられています。


付録ファイル

 このパッケージ中の付録ファイルには、これらのデータの利用に役立つEPICUREスクリ
プトとログファイル、および結腸線量を他の臓器線量に変換するのに用いることができる補
正係数表が含まれています。

ファイル名            種類                              説明
r12canc.scr     EPICUREスクリプト   r12canc.datをAMFITもしくは他のEPICURE プログ
                                    ラムに読み込むためのコマンド
r12slmod.scr    EPICUREスクリプト   LSS第12報にある固形がん基本モデル(11ページ)
                                    と固形がん過剰リスク表(5ページ、表II)を再現
                                    するためのコマンド
r12slmod.log    EPICURE ログ        r12slmod.scrスクリプト実行の結果
r12leuk.scr     EPICUREスクリプト   r12leuk.datをAMFIT もしくは他のEPICURE プロ
                                    グラムに読み込むためのコマンド
r12lkmod.scr    EPICUREスクリプト   LSS第12報にある白血病基本モデル(12ページ)
                                    と白血病過剰リスク表(7ページ、表V)を再現す
                                    るためのコマンド
r12lkmod.log    Epicureログ         r12lkmod.scrスクリプト実行の結果
ds86adjf.scr    Epicureスクリプト   結腸線量から近似補正臓器線量を算出するための
                                    コマンド


次の表は臓器線量補正係数ファイルのフォーマットおよび内容の説明です。

ファイル名  レコード数  レコード長  レコード当たりの変数数  ファイルのサイズ(バイト)
DS86ADJF.DAT    90          24                  5                   2,340

ファイルのフォーマット:MS-DOS、 3.5インチ1.44 MBまたは5.25インチ1.2 MB

作成日:1994年9月9日

交差分類変数は1−3項です。
要約変数は4−5項です。

 表の中の各セルについては、 DS86方式に組み込まれた15個の臓器それぞれに対して、
結腸線量を基にしたガンマ線と中性子の臓器線量補正係数が計算されています。この表は都
市と年齢別についても交差分類してあります。選択された年齢群は、DS86方式で三つの異
なるファントムが使われていることを反映しています。被爆者の被爆時年齢に基づいて適切
なファントムが選択されました。

 LSS第12報の解析は、DS86臓器線量から直接作成した表を用いて行ったもので、これら
の近似値を用いたものではありません。この結果、これらの近似値を用いて計算したパラメ
ータ推定値は、報告書の中のものと幾分違います。

    変数          説明                                欄

1   臓器                                             1 - 2
                  01  骨格    09  肺
                  02  骨髄    10  卵巣
                  03  膀胱    11  膵臓
                  04  脳      12  胃
                  05  乳房    13  精巣
                  06  水晶体  14  甲状腺
                  07  大腸    15  子宮
                  08  肝臓

2   都市                                               6
                  1   広島    2   長崎

3   被爆時年齢群                                      10
                  1   幼児(0−2歳)
                  2   子供(3−11歳)
                  3   成人(12歳以上)

4   平均中性子臓器補正係数                          11 - 17

5   平均ガンマ線臓器補正係数                        18 - 24



                                 LSS第12報:付録表

 この文書には、1950年10月1日から1990年末までの寿命調査(LSS)部位別がん死亡率
データを要約した付録表が含まれています。このデータの主要な解析と考察はLSS第12報
の第1部に掲載されています。これらの付録表に加え、都市、性、臓器(結腸または骨髄)
線量、被爆時年齢および被爆後経過時間別に死亡率データを詳細に層化した二つのデータセ
ットが放影研から発表されています。ここに示された結果は症例および人年の臓器線量別の
表に基づいています。

 表はR12Supp.xls.という名称のExcel 7.0ワークシート・ファイルに含まれています。

表1に示されているがんまたはがん群についてそれぞれ三つの表を作成しました。それぞ
れのセットの最後の二つの表は、線量および期間または被爆時年齢区分別の症例観察数、期
待数ならびに人年の分布を要約したものです。これらの表にはまた線量区分および性別の合
計人数が示されています。それぞれの表の期待症例数は、被爆時年齢および(妥当であれば)
性別の影響が考慮された層化過剰相対リスク(ERR)の線量に対して線形のモデルに基づい
て計算されました。期待症例数は、都市、性、被爆時年齢および到達年齢別の層化バックグ
ラウンドモデルより計算されました。 ERR推定値は単に観察値を期待値で割ったものから
1を引いた値です。

         表1:付録表で用いられているがん

がん・がん群    ICDコード(第9回改訂版)       臓器線量

固形がん           140 - 199                  結腸
白血病            204 - 208                  骨髄
胃                 151                     胃
肺                 162                     肺
肝臓            155 (0, 1, 2)               肝臓
結腸                153                     結腸
直腸                154                     膀胱
膵臓                157                     膵臓
食道                150                     骨髄
胆嚢                156                     肝臓
膀胱                188                     膀胱
子宮             179 - 182                  子宮
女性乳房              174                     乳房
卵巣                183                     卵巣
前立腺               185                     膀胱
他の固形がん   140-199間の他のすべてのコード    結腸
悪性リンパ腫         200 - 202                  骨髄
多発性骨髄腫            203                     骨髄

 それぞれのセット内の第1表は特定部位に対するパラメータ推定値と、特定の仮説の検定
結果を示したものです。4 Gy未満のDS86遮蔽カーマ推定値が計算されている人のみに基づ
いた非線形線量反応に関する検定を除き、これらの推定値および検定は、DS86線量が計算
されたすべてのLSS対象者の解析に基づくものです。

 症例数が多く、放射線に関連した過剰リスクが認められる部位について、過剰相対リスク
モデルおよび過剰絶対リスクモデルの両方に関する詳細な結果が示してあります。他の部位
に対するパラメータ推定値計算と仮説検定は、ERRモデルについてのみ、要因の数を限定
して行われました。

解析と仮説検定に用いたモデル

 ERRの解析は層化バックグラウンドモデルに基づいています。層化変数は都市、性、被
爆時年齢および到達年齢です。より詳細なERR解析では線量に対して線形で、性および被
爆時年齢を修飾因子とする基本モデルを使用しました。このモデルで用いたERRは次のよ
うに表されます。

ERR =b1sd exp(b2(e - 30))

 ただしb1sは性に依存する線量の影響、b2は被爆時年齢(e)の影響を表しています。モデル
中のeの使われ方から、線量影響パラメータは被爆時年齢が30歳であった人のリスクに相
当します。線形の到達年齢の対数を上記モデルの指数項に加えてERRに対する到達年齢の
影響を調べました。都市の影響を調べる際には男女で影響は同じと考えました。過剰症例数
が少なく完全なモデルを使用するのに十分でない部位については、被爆時年齢および性の影
響を通常通りにはモデルに組込みませんでした。

 乳がんを除き、バックグラウンド・リスクの完全なパラメトリック・モデルに対比して過
剰絶対リスクをモデル化しました。このモデルではバックグラウンド・リスクの対数は、70
歳で単独の節点を持ち、到達年齢の対数を含んでいる性別2次スプラインとして示しました。
このモデルの切片には性、都市および出生年が含まれています。乳がんのバックグラウン
ド・リスクは、50歳で単独の節点を持ち、到達年齢の対数を含んでいる線形スプラインと
してモデル化しました。切片には性および出生コホートが含まれています。過剰絶対リスク
に用いた基本モデルは次のように表されます。

EAR =b1sd exp(b2 ln(age/50))

 ただし、age は到達年齢であり、従って性別線量係数は50歳時のリスクを示しています。

仮説検定と信頼区間に関する技術的注釈

 多くの場合、仮説検定は尤度比検定に基づき、信頼区間はプロフィール尤度の直接評価に
より計算されています。しかし時として尤度比統計量、あるいはしばしば尤度に基づいた信
頼限界が計算不可能な場合があります。こうした状況が生ずるのは、最尤推定値または当該
パラメーターに対する信頼域のどこかで集団中の一部に対する線量影響が負であるときで
す。最尤推定値がない場合は採点法を用いました。信頼限界が計算できない場合は表中に
N.C.で示してあります。影響の比(性と都市の影響の比)の信頼区間の計算でも関連した問
題が生じます。分子と分母に対する同時信頼区間がこの両方の影響について0を含む場合、
すべての比の数値はデータと一致します。これは表中にall valuesで示してあります。同時
信頼区間が分母には0を含むが分子には含まない場合、この比に対する信頼区間は特定の区
間外の点すべてから構成されます。このような場合には正の下限および無限の上限(表中で
はinfで表示)を示す上限区間のみを報告しています。多くの場合、負の区間は我々が考え
るモデルでは計算することが不可能です。


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