成人健康調査(AHS)

成人健康調査(AHS)は2年ごとの健康診断を中心とした臨床調査プログラムです。AHSの主な目的は原爆放射線の健康に及ぼす影響を調査することです。このために 寿命調査(LSS)対象者の中から選ばれた約20,000人について1958年から追跡調査が行われており、更に1977年にはLSS対象者約2,400人と胎内被爆者約1,000人が追加されました。健康診断に含まれる項目は、一般的検診、心電図、胸部X線、超音波検査、および生化学検査などです。これらの検査により収集されたデータを用いて、各種疾患の有病率や発生率、生理学的および生化学的検査結果の変動について長期にわたる追跡調査が可能になります。また、血圧の測定値などの長期にわたる変動を把握することは受診者のためにもなり、被爆者の健康管理に役立っています。

AHS調査の中心は以下の通りです。

  1. がん以外(良性腫瘍、心臓血管疾患、その他の慢性病)の病気と放射線の関係
  2. 放射線やその他のリスク因子と関係するがんの発生機序の研究
  3. 原爆放射線被曝に関連する加齢と心理的・社会的変化
  4. 生理学的測定値における放射線関連の変化
  5. 医用放射線量推定

AHSでは、受診者一人一人の病歴(罹患、治療、検査など)、生活様式(運動、栄養、喫煙など)に関する情報も集められていますので、放射線被曝の影響を検討する際、これらの要因も考慮に入れて評価することができます。更に必要と認められた場合には、一般検診以外に骨密度測定や婦人科検診などの特殊検査も実施しています。皮膚がん、乳がん、甲状腺がん、白内障、および肝疾患の検査も重視しています。検査項目それぞれの結果は本人に通知しています。

このプログラムで得られた結果は、他の疫学研究の分野でも重要な意味を持っています。例えば、Ni-Hon-San(Nippon-Honolulu-San Francisco)心臓血管疾患調査では、成人健康調査対象者とホノルルおよびサンフランシスコに住む日系人との比較が行われ、環境の違い、食習慣、あるいは生活様式の違いが心臓血管疾患の発生率・死亡率にどのような影響を与えるかについて研究が行われています。


成人健康調査報告書

成人健康調査から得られた結果は定期的にまとめられて、学術誌上で報告されています。 成人健康調査報告書の一覧はこの見出しをクリックすると見られます。

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