放射線が細胞に傷をつける仕組み

細胞に放射線が当たると何が起こるの?

原子から電子が放出されます。

原子の構造を見てみましょう。

原子の中心には「原子核」があります。
その周囲を「電子」が飛びまわっています。

原子の大きさを野球場の大きさとすると、原子核の大きさはゴルフボールよりも小さい程度です。

放射線のエネルギーは電子を軌道からはじき出すことがあります。
これをイオン化、あるいは電離といいます。


放射線による初期反応の様子

通常の化学反応における電子のやりとりと違って、放射線によって生じる電子の放出は、どの電子に起こるか分かりません。そうして生じたイオンは化学的に極めて不安定で、ラジカルと呼ばれています。化学反応性が大変高く、めちゃくちゃな化学反応をしてしまいます。


細胞に生じた小さな傷の様子

放射線と放射線によってたたき出された電子は、細胞の中をでたらめに走り回ります。その結果、細胞を構成するいろいろな分子に傷がつきます。細胞核にある染色体のDNAにも傷がつくことがあります。

放射線に傷つけられた細胞はどうなるの?

放射線の量が大変多い場合

DNAに生じた傷などによって細胞が死ぬので、白血球が減少したり、消化管粘膜が損傷を受けて下痢をしたりします。

放射線の量がそれよりも少ない場合

上のような急性症状は出ませんが、細胞に傷がついているので、細胞が自分で傷を治すときに、ごくまれに間違いが起こり、遺伝子に異常(突然変異)が生じることがあります。そうした細胞の中から、将来がんになるものが出てくる可能性があると考えられています。

DNA切断が修復される時、一部が誤って修復される結果、染色体異常が生じます。
放射線が健康によくないのは、放射線による「被ばく」によって細胞のDNAに傷(主としてDNA切断)ができるからです。

まとめ

  • ・放射線(X線やガンマ線)が体(細胞)に当たると、原子や分子から電子が放出される。
  • ・電子は飛び回って周囲にエネルギーをまき散らす。
  • ・その結果、ラジカルが作られる。
  • ・ラジカルは、速やかに周囲の原子と反応するので、異常な化学反応が起こってしまう。
    (つまり、細胞に局所的な小さな傷ができる)
  • ・細胞膜にできた傷が原因で細胞が死ぬ(アポトーシス)こともあれば、DNAが直接あるいは間接的(H2O分子がラジカルになってDNAを攻撃する)に切断され、細胞死や突然変異が生じることもある。
  • ・その修復の誤りによって突然変異を生じたりする。
    ———- 数時間から数日後に起こることです ———-
  • ・組織が傷害から回復する。
    ———- 数週間後に起こることです ———-
  • ・白血病が増加する。
    ———- 数年後に起こることです ———-
  • ・がんが増加する。
    ———- 数十年後に起こることです ———-

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