これまでの成果と今後の研究

  • 現在までに分かったこと

    1.被爆者では、特定の臓器のがんが増えています。

    2.高線量被爆者では「がん以外の病気(白内障、甲状腺の良性腫瘍、心臓病、脳卒中など)」も増えています。

    3.高線量被爆者では加齢に伴って現れるのと同じような免疫機構の衰退傾向が見られます。

    4.高線量被爆者では、軽度の炎症反応を示している人が多いようです。

    5.これまでの研究では、被爆者の子供への遺伝的影響は認められていません。

    6.現時点までの観察では、被爆者の子供に死亡率、がん発症率の増加は認められていません。

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  • 被爆者で増加が見られるがん

    白血病のほか、これまでに甲状腺がん、乳がん、肺がん、結腸がん、胃がんなどの増加が知られています。 しかし、子宮がん、すい臓がん、前立腺がんのように、増加の見られないものもあります。

    1グレイの放射線被ばくによるがん死亡の相対リスク(1950-2003年)

    部   位
    相対リスク
    白血病
    4.1倍
    すべてのがん(白血病は除く)
    1.4倍
     食道がん
    1.6倍
     胃がん
    1.3倍
     結腸がん
    1.3倍
     肺がん
    1.8倍
     乳がん
    1.9倍
     膀胱がん
    2.2倍

    被爆時年齢30歳の人が70歳になった時点での男女平均の相対リスク
    (ただし白血病については、若年発症が多いため、被爆時年齢や到達年齢による影響の違いは考慮していない)

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  • これから10-20年で明らかにしようとすること

    1.被爆した時の年齢が若い人は、高齢であった人よりも放射線の影響を受けやすいのでしょうか?

    2.被爆した時の年齢が若い人と高齢であった人とでは、増加するがんの種類が違うのでしょうか?

    3.今まで被爆者で増加が見られていない種類のがんは、今後も変化が見られないのでしょうか?

    4.被爆した時の年齢が若い人は、高齢であった人より、白内障、心臓病、脳卒中など、がん以外の病気になりやすいのでしょうか?

    5.放射線に加えて、喫煙・食事などが、がんの発症にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

    6.放射線に被ばくすると、どのようにしてがんおよびその他の病気が引き起こされるのでしょうか?

    7.放射線による病気の発生に免疫異常や炎症は関係するのでしょうか?

    8.病気への「なりやすさ」や放射線の健康影響の個人差には、どのような遺伝子要因が関係するのでしょうか?

    9.高線量被爆者の子供では、遺伝子の突然変異が増えるのでしょうか?

    10.被爆二世(中高年者)で、生活習慣病は増えているのでしょうか?

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  • これから20年以上かかりそうなこと

    1.放射線により引き起こされるがんの発生が、臓器によって違う理由は何でしょうか。

    2.放射線によるがんは、他の原因により引き起こされるがんとは違うのでしょうか?

    3.どのような仕組みで「がん以外の病気」が被爆者で増えるのでしょうか?

    4.被爆二世で生活習慣病は増加するのでしょうか?増加するとすればその理由は何でしょうか?

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