がん登録データの利用

現在、広島県・市および長崎県が運営し、放影研が受託している地域がん登録事業は、広島市で1957年(広島県では2002年)に、長崎市で1958年(長崎県では1985年)に始まりました。この全市的な登録は当初、地元医師会により放影研の前身である原爆傷害調査委員会(ABCC)に、また後には放影研にその運営が委託されました。 近年は、広島県では ほぼ21,000件のがん症例が、また長崎県では 11,000件近い症例が、毎年新たに登録されています。 これらのうち約3%は、放影研の寿命調査集団に発生しています。すべての医師と病院は医師会からがん症例をがん登録に報告するよう依頼されており、近年では地域がん診療連携拠点病院で院内がん登録が整備され、がん登録への報告が増加しています。広島・長崎ともに症例の約20%は、地元の主要な病院を定期的に訪問する放影研疫学部の調査員により採録されています。

このような積極的な症例確認とデータ収集、および地元医療機関との密接な協力体制により、この登録から得られたがん罹患率データの精度は非常に高いと考えられています。放影研では、がん登録事業で収集されたデータを研究のために申請して利用しています。これらのデータの解析結果は、原爆被爆者だけでなく、一般の集団におけるがんの罹患率についても貴重な情報を提供しています。特に、皮膚がん、乳がん、甲状腺がんなど、比較的致死性の低い腫瘍のリスク推定には大変重要です。近年のがん治療の進歩を考えると、このがん登録事業はますます重要な役割を果たしていくと思われます。

 

 

がん発生数とがん死亡数の比較

皮膚がん・乳がん・甲状腺がんでは、死亡数は発生数よりかなり少ない(1958-2002年)

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