変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法 (Denaturing gradient gel electrophoresis, DGGE)

DNAは通常の場合2本鎖として存在し、センス鎖とアンチセンス鎖の2本のポリヌクレオチド鎖からできています。両鎖はアデニン(A)とチミン(T)の間の水素結合、およびグアニン(G)とシトシン(C)の間の水素結合によって安定化しています。この水素結合の安定性は、温度や変性剤によって変化します。DNA配列中に塩基置換が生じると、その周辺のDNA配列の安定性は変化します。また、正常型のDNA断片(センス鎖をB、アンチセンス鎖をDとして、B:Dと書く)と、その断片の一部に塩基置換の生じたDNA断片(B’:D’)を混合して加熱し、一旦変性させ、B、D、B’、D’という4本の1本鎖とした後冷却すると、それらは再会合して再び2本鎖となりますが、もとの組み合わせのB:DとB’:D’のほかに、B:D’、B’:Dの組み合わせもできます。新しくできた2本鎖DNA中では、塩基のミスマッチ(AとT、GとC以外の組み合わせ)が生じ、これらの2本鎖DNAはミスマッチのない2本鎖DNAに比べて不安定です。

DGGE法は、変性剤の濃度勾配のあるポリアクリルアミドスラブゲル中でDNA断片の混合物を泳動し、それぞれの不安定性の違いによってDNA断片を分離する方法です。ミスマッチのある不安定なDNA断片が、ゲル中のある変性剤濃度の部分まで移動すると、ミスマッチ周辺のDNA配列はその不安定さのために、部分的に1本鎖へと解離します。このような部分的に解離したDNA断片の移動度は非常に遅くなり、解離部分の無い、完全な2本鎖DNA断片の移動度と差がつくので両者を分離できます。

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