発生率(incidence)

集団における疾病発生を表す基本的な方法として発生率と 有病率 (prevalence)とがあります。発生率は、特定の期間内に集団に新たに生じた疾病の症例数を割合として示すもので、「罹患率」という訳語が使われることもあります(通常、一定の人数を一定期間追跡して見いだされた新しい症例数を、人数×期間を分母として表します。例えば、年間10,000人当たりの新たに発生したがんの症例数というように)。「新たに発生した」という制約があるので、発生率を調べる集団は、追跡期間中に疾病に罹患する可能性のある人々に限られます(例えば、一度かかったら免疫の働きにより二度とかからないような伝染病の場合には、すでに免疫のある人は除外しなければならないわけです。)このように制限された集団は(すでに罹患している人や疾病に対して免疫ができた人とは対照的に)疾患に罹患する可能性があるので、一般的に「リスクを持つ観察集団 (at-risk population)」と呼ばれています。このため、発生率はしばしば「リスク(risk)」とも呼ばれています。発生率は疾病罹患期間や致死性かどうかに影響を受けないので( 有病率 はこの点が問題なのです)、有害因子への暴露、あるいは予防対策によって疾病の発生に影響があるかどうかを調べることができるという点で重要なのです。

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