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ウィリアム J.シャール博士を偲ぶ

勲三等瑞宝章を授章されたシャール博士 (1992年11月3日)

 

ABCC発足後の1949年 (昭和24年) に遺伝学部長として赴任され、放影研へ改組された後も2011年 (平成23年) まで数々の役職を歴任しながら研究所を先導くださったウィリアム J.シャール (William J. Schull) 博士が2017年6月20日、米国テキサス州ヒューストン市にて95歳で逝去されました。シャール氏の包容力に富んだお人柄は、ABCCと放影研の職員のみならず、多くの被爆者と被爆二世の方々に愛されました。また同氏の科学における深い洞察は、多くの研究者を魅了しただけでなく、研究面での力強い指針となりました。シャール氏のご逝去を心から残念に思うと同時に、ご冥福をお祈りいたします。

ABCC設立当初において多大な貢献をされたジェームズ V.ニール (James V. Neel) 博士は、2000年 (平成12年) に84歳で亡くなられましたが、シャール氏とニール氏はNeel & Schull と並び称せられ、1947年に開始された被爆者の子どもにおける放射線の遺伝的影響の研究とその成果は、今日においても広く引用されています。そしてお二人は米国において人類遺伝学の研究分野を創始し、また、これを日本に広めた方々でもあります。人類遺伝学は、ゲノム解析技術と歩みを共にしながら、今や生命科学の最先端の研究分野として急速な発展を遂げつつあり、ABCCが設立当初において人類遺伝学研究の最先端組織であったことは、放影研として深く思いをいたすべきでありましょう。シャール氏のご逝去により、放影研における放射線遺伝学研究の最初の章が終わりました。放射線遺伝学の次の章への取り組みが、今後放影研に求められています。

放射線影響研究所 理事長
丹羽 太貫