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第49回科学諮問委員会をZoomで開催 (3月16~18日 広島研究所)

第49回科学諮問委員会を日本時間の2022年3月16日から18日までの3日間、開催しました。この委員会は、放射線影響研究所(放影研)の研究計画を評価するため、科学的な各分野を専門とする外部の専門家からなる組織です。新しい研究計画の審査とともに、進行中の研究に関しても放影研の理事会や評議員会に勧告します。新型コロナウイルス感染症拡大の影響のため、今年度も広島研究所を拠点として、Zoomを利用しての開催となりました。

3日にわたる開催期間中、米国と日本から9名の科学諮問委員と4名の特別科学諮問委員、合計13名が参加しました。また、放影研の評議員、監事のほか、8名のオブザーバーが会議を視聴しました。

科学諮問委員から重点的に審査される部署は年度ごとに変わり、今年度は統計部がその対象となりました。併せて、臨床研究部、疫学部、情報技術部、研究資源センター(科学データおよび生体試料情報の集約、共同研究における利用上のサポート、研究所内の情報全般のアーカイブ〔保存記録〕の作成・管理等を行い、放影研の研究者が研究資料や科学データを検索しアクセスできる研究用の統合システムの構築等を担当)、バイオサンプル研究センター(原爆被爆者ならびに被爆二世の方々から提供された血液、尿などの生体試料を冷凍庫で保管および管理し、それらの生体試料の情報を管理するデータベースの整備等を担当)、分子生物科学部(遺伝学〔生物の遺伝現象やDNAを研究する生命科学〕およびゲノミクス〔ゲノムと遺伝子について研究する生命科学〕などの研究を担当)、さらに、放影研の将来の研究と組織運営の構想である戦略計画に関しても議論されました。

初日の3月16日、会議は、理事長の丹羽太貫による放影研の戦略計画の説明に始まり、放影研の調査集団における放射線リスクだけでなく、個人の放射線リスクを理解することの重要性や原爆被爆者ならびに被爆二世の方々に放影研の研究成果がどのように還元できるかについて、焦点が当てられました。また、前述の統計部の審査が初日に行われました。

会議2日目の3月17日、研究資源センターの進捗状況についての説明ならびに疫学部、臨床研究部などからの業績報告があり、それらについて議論が行われました。最終日、3月18日の午前、分子生物科学部の取り組みについて検討中の「トリオ」調査(被爆した両親および被爆二世からなる3者の被爆家族1,000組を対象に、ゲノム配列解析を行うことで、親の被爆による放射線の線量に応じて、被爆二世におけるいろいろな種類の突然変異の数が増加するか否かを検討し、被爆の遺伝的影響を明らかにする研究)を含めて議論されました。原爆被爆者ならびに被爆二世の方々からご提供いただいた生体試料を用いた将来の共同研究におけるバイオサンプル研究センターの役割、および研究資源センターと緊密に連携し、その目的を達成するための技術的専門知識を提供している情報技術部について審議されました。

その後、科学諮問委員は、3日間の会議の内容を踏まえて放影研への勧告に向けた討議に移りました。それに続いて、Zoomによる記者会見が開催され、マスコミ7社8人の記者に参加いただきました。会見の冒頭、科学諮問委員会共同座長の日本文理大学新学部設置準備室教授、甲斐倫明博士より科学諮問委員会の3日間の審査の概要説明が行われました。もう一人の共同座長である、米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部ブルームバーグ公衆衛生大学院・腫瘍学部 生物統計学科ブルームバーグ特別教授のNilanjan Chatterjee博士は、時差の都合上、記者会見には参加されませんでした。

甲斐博士によるマスコミに向けた科学諮問委員会の概要報告は以下のとおり。

  • 会議に先立って準備されたプレゼンテーション動画をもとに、科学諮問委員は事前に質問やコメントを提出できた。
  • 今回の科学諮問委員会で重要な議題を審議するために、生物統計学と情報学の専門知識を持つ4人の特別科学諮問委員が参加した。
  • 昨年の科学諮問委員会の勧告を受けて、放影研の戦略計画の進捗状況が報告された。
  • 優先度の高い研究資源センターの整備が大幅に進んだ。研究資源センターは、放影研の研究協力者から提供されたすべてのデータを統合し、アーカイブ化することが不可欠であるため、さらなる整備が必要である。
  • 統計部は非常に質が高く、研究部門の研究計画や個々の研究に対して助言する役割を果たしている。統計部は、国内外の大学との共同研究を行うことを奨励されている。また、高度なデータ分析を可能にするため、率先してデータサイエンス技術を取り入れる立場にあることが強調されるとともに、放影研の研究の透明性と再現性を強化することも期待されている。
  • 大学院レベルの若手研究者を含む生命科学とバイオインフォマティクスの専門家を採用し、外部機関と共同研究を行うべきである。
  • 放射線の遺伝的影響を明らかにするために行われる、親と被爆二世のトリオについてのゲノム配列解析が最優先事項であることが強調された。

今回の科学諮問委員会の参加者は以下のとおり。

科学諮問委員
甲斐 倫明: 日本文理大学 新学部設置準備室 教授(共同座長)
Nilanjan Chatterjee: 米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部 ブルームバーグ公衆衛生大学院 腫瘍学部 生物統計学科 ブルームバーグ特別教授 (共同座長)
Jonine Bernstein: 米国スローン・ケタリング記念がんセンター 生存・転帰リスクプログラム担当疫学者 兼 共同リーダー
Francesca Dominici: 米国ハーバード公衆衛生大学院 学部長室 研究部門上級副学部長 兼 生物統計学部 生物統計学 教授
Andrew Feinberg: 米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部 ブルームバーグ医学特別教授 エピジェネティクス・センター所長
権藤 洋一:東海大学 医学部 基礎医学系 分子生命科学 教授
Curtis Harris: 米国国立衛生研究所・国立がん研究所 がん研究センターヒト発がん研究室 室長および分子遺伝学・発がん部門 部長
松田 文彦: 京都大学大学院 医学研究科附属ゲノム医学センター長
永田 知里: 岐阜大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学分野 教授 (欠席)
鈴木 元: 国際医療福祉大学クリニック教授 兼 院長

特別科学諮問委員
Giovanni Parmigiani: ハーバード大学 T.H. Chan公衆衛生大学院 生物統計学部およびDana-Farberがん研究所データサイエンス部門教授
服部 聡: 大阪大学大学院 医学系研究科 医学統計学 教授
Melissa Haendel: オレゴン健康科学大学 保健データセンター長 コロラド大学Anschutz校 データサイエンス部門Marsico記念教授 研究情報科学主任
荻島 創一: 東北大学高等研究機構未来型医療創成センター/東北メディカル・メガバンク機構 医療情報ICT部門 ゲノム医療情報学分野教授

監 事
河野 隆: 広島総合法律会計事務所 公認会計士・税理士
Paul D. Preziotti: 公認会計士 Johnson Lambert LLPパートナー

オブザーバー
山本 博之: 厚生労働省健康局総務課 原子爆弾被爆者援護対策室長
南川 一夫: 厚生労働省健康局総務課 併 原子爆弾被爆者援護対策室課長補佐
Kevin Dressman: 米国エネルギー省 環境保健安全保障局 保健安全部 部長
Isaf Al-Nabulsi: 米国エネルギー省 環境保健安全保障局 保健安全部 国内・国際健康調査室 日本プログラム主事/ヘルス・サイエンティスト・アドミニストレーター
Benjamin E. Foster: 米国大使館エネルギー担当官・エネルギー省日本事務所代表
Elizabeth Eide: 米国学士院・工学院・医学院 地球生命研究部門 常任理事
Charles Ferguson: 米国学士院 学術会議 地球生命研究部門 原子力・放射線研究委員会 常任幹事
Rania Kosti: 米国学士院・工学院・医学院 原子力・放射線研究委員会 上級プログラム担当官

オブザーバー(放影研評議員)
Jonathan M. Samet: 米国コロラド大学 公衆衛生学部 学部長
早野 龍五: 東京大学 名誉教授
Angela L. Bies: 米国メリーランド大学公共政策学部世界的慈善および非営利事業リーダーシップ寄付講座 准教授
Joe W. Gray: 米国オレゴン健康科学大学医学部生物医学工学科Gordon Moore寄付講座長 兼 教授
神谷 研二: 広島大学副学長 兼 特任教授
Keith R. Yamamoto: 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授、科学政策・戦略担当副総長、精密医療担当部長
米倉 義晴: 大阪大学放射線科学基盤機構 放射線科学部門 特任教授

放影研
丹羽 太貫:理事長(代表理事)
Robert Ullrich:副理事長兼研究担当理事
兒玉 和紀:業務執行理事
Eric Grant:主席研究員
田邉 修:主席研究員兼バイオサンプル研究センター長
林 茂利:事務局長