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第52回科学諮問委員会を開催

第52回科学諮問委員会を日本時間の2025年3月3日から5日まで、3日間にわたり広島研究所で開催しました。この委員会では、外部の専門家に放影研で進められている調査・研究を審査していただき、新たな研究計画の認定や進行中の研究の継続・変更に対して勧告を行っていただきました。

今回は、日本と米国から科学諮問委員9名(全10名のうち1名欠席)に加え、特別諮問委員2名の計11名にご出席いただきました。また、オブザーバーとして、厚生労働省、米国エネルギー省および米国学士院から、そして監事、評議員にもご参加いただきました。

科学諮問委員会では重点的な審査を受ける部門やテーマが年度ごとに変わり、今回は、放射線が次世代に及ぼす影響を調査するために被爆者とその子供たちのゲノム(全遺伝情報)を解析する研究(以下、トリオ研究)と疫学部について集中的に審議が行われました。

初日、3月3日の会議では、放影研理事長の神谷研二の挨拶に続いて、副理事長のプリーサ・ラジャラマンより研究戦略の概要を報告しました。それに続き、トリオ研究の審議、疫学部の審議、そして新しい線量推定手法に関する概要説明が行われました。

2日目の3月4日は、統計部、分子生物科学部、臨床研究部の概要のほか、放影研で保存されている各種データの連携や統合の体制について討議されました。

最終日の5日は、上記の過程を経て委員会が勧告を作成し、全体の総括を行った後、記者会見が開催され、マスコミ11社13名の方にご参加いただきました。

会見の冒頭、日本側共同座長で公益財団法人 環境科学技術研究所 理事長の島田義也(しまだよしや)先生と、米国フロリダ大学医学部 病理学・免疫学・臨床検査医学科 名誉教授のパトリック・コンカノン先生が3日間の議論の概要をメディアへ説明しました。

科学諮問委員会の議論の概要と、科学諮問委員会への参加者一覧は下記の通りです。

科学諮問委員会の議論の概要

理事長ならびに副理事長の強いリーダーシップのもとに各々の研究部門の情報共有と協力体制が強固になり、今後の放影研のさらなる調査研究の進展が期待される。
放影研の調査研究は、被爆者や被爆二世の方々の協力に支えられており、調査への参加者と放影研との間の信頼関係で進められていることが述べられた。
放影研による数々の研究によって得られた成果は、被爆者の健康の質の向上に加え、放射線業務従事者の健康管理は言うまでもなく、エビデンスに基づく放射線防護の策定など、適切な政策立案に多大な貢献をしている。
トリオ研究は、世界の中でも放影研でしか成し得ない極めて独創的な研究である。綿密な事業計画が策定され、研究手法の確立、放影研内の各部門と国内外の研究機関との強固な協力体制の構築、調査参加者への丁寧な説明とインフォームドコンセントの取得、倫理委員会の承認などがなされるとともに、被爆者を始めとする利害関係者や社会への十分な説明を積極的に行っており、本格的な解析を開始する準備ができていることを確認した。
疫学研究については、被爆者ならびに被爆二世の方のがん及びがん以外の疾病のリスク評価のためのデータ更新と解析の途中経過が報告され、研究が着実に進んでいることが報告された。
また、年齢や性、臓器の解剖学的情報などを考慮した新たな線量評価手法が開発され、今後、より精緻な放射線影響の評価が期待される。
情報技術部が構築した情報統合データベースには、放影研内の複数の部署と連携して臨床情報および生体試料情報の登録が、放影研の移転計画も考慮されて、着実に進んでいる。今後の研究活動において、研究計画の立案、共同研究体制の構築や研究の円滑な推進に大きく貢献するものと期待している。
広島研究所の広島大学キャンパス内への移転を2026年度に延期したことが報告された。この移転により、広島大学との人材の交流、新たな共同研究の機会がより多く得られることで、放影研がさらに発展することを大いに期待している。
今後も引き続き、研究活動を通じて、人類の健康に資することを期待している。

科学諮問委員会への参加者

科学諮問委員
Patrick Concannon:米国フロリダ大学医学部 病理学・免疫学・臨床検査医学科 名誉教授(共同座長)
島田 義也:公益財団法人 環境科学技術研究所 理事長(共同座長)
Jonine Bernstein:米国スローン・ケタリング記念がんセンター 生存・転帰リスクプログラム担当疫学者兼共同リーダー
永田 知里:岐阜大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学分野 教授
Nilanjan Chatterjee:米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部 ブルームバーグ公衆衛生大学院 腫瘍学部 生物統計学科ブルームバーグ特別教授
鈴木 元:医療法人保内郷厚生会 保内郷メディカルクリニック 医師
Gayle Woloschak:米国ノースウェスタン大学フェインバーグ医学研究科 放射線腫瘍学部 教授
Melissa Haendel:米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校Sarah Graham Kenan特別教授、遺伝学部、小児科、データサイエンス・社会学部 教授、精密医療・トランスレーショナル情報学部 部長、NC TraCS計算科学部 副部長、UNCヘルス・システム調査データ相互運用性アドバイザー
松田 文彦:京都大学大学院 医学研究科附属ゲノム医学センター長

特別科学諮問委員
Fuki Hisama:米国ワシントン大学医学部 遺伝医学 教授
長神 風二:東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 教授

監 事
河野 隆:公認会計士 河野隆公認会計士事務所

オブザーバー
安田 正人:厚生労働省健康・生活衛生局総務課 原子爆弾被爆者援護対策室長
九十九 悠太:厚生労働省健康・生活衛生局総務課 課長補佐
佐野 隆一郎:厚生労働省健康・生活衛生局総務課 原子爆弾被爆者援護対策室 課長補佐
Joey Zhou:米国エネルギー省 上級疫学者
Cato Milder:米国エネルギー省 環境保健安全保障局 日本プログラム主事
Elizabeth Eide:米国学士院・工学院・医学院 地球生命研究部門 常任理事
Charles Ferguson:米国学士院 原子力・放射線研究委員会 化学・技術委員会上級監事
Daniel Mulrow:米国学士院 原子力・放射線研究委員会 プログラム担当官
早野 龍五:東京大学名誉教授(放影研評議員)
佐野 利男:前 原子力委員会委員・元 軍縮会議日本政府代表部 大使(放影研評議員)
小林 正夫:日本赤十字社中四国ブロック血液センター 相談役(放影研評議員)


放影研
神谷 研二:理事長(代表理事)
Preetha Rajaraman:副理事長兼業務執行理事
兒玉 和紀:業務執行理事
田邉 修:主席研究員/バイオサンプル研究センター長/分子生物科学部長代理
金岡 里充:事務局長