• お知らせ

第53回科学諮問委員会を開催

 

53回科学諮問委員会を日本時間の202634日から6日まで、3日間にわたり広島研究所で開催しました。この委員会では、外部の専門家に放影研で進められている調査・研究を審査していただき、新たな研究計画の認定や進行中の研究の継続・変更に対して勧告を行っていただきました。

今回は、日本と米国から科学諮問委員10名に加え、特別諮問委員2名の計12名にご出席いただきました。また、オブザーバーとして、厚生労働省、米国エネルギー省、米国学士院のほか、評議員の先生等にもご参加いただきました。

今年の科学諮問委員会では造血器腫瘍(血液のがん)や、昨年末に記者会見を開催しましたトリオゲノム解析のほか、準備を進めている研究資源センターなどについて審議が行われました。

初日、34日の会議では、放影研理事長の神谷研二の挨拶に続いて、副理事長のプリーサ・ラジャラマンより研究戦略の概要を報告しました。それに続き、造血器腫瘍発生メカニズムの解析の審議、トリオゲノム研究の進捗報告、そして研究資源センターの審議が行われました。

2日目の35日は科学諮問委員会と各部との間で、研究内容等について討議が行われました。

最終日の6日は、上記の過程を経て委員会が勧告を作成し、全体の総括を行った後、記者会見が開催され、マスコミ12社にご参加いただきました。

会見の冒頭、日本側共同座長で国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 放射線医学研究所 放射線影響予防研究部 部長の今岡 達彦先生と、米国側共同座長で米国ジョンズ・ホプキンズ大学 ブルームバーグ公衆衛生大学院生物統計学部門および医学部腫瘍学部門 ブルームバーグ特別教授のNilanjan Chatterjee先生が3日間の討議の概要をメディアへ説明しました。

科学諮問委員会の討議の概要と、科学諮問委員会への参加者一覧は下記の通りです。

科学諮問委員会の議論の概要

  • 放影研の調査研究は、被爆者や被爆二世の方の協力に支えられており、調査への参加者と放影研との間の信頼関係の下に進められている。
  • 放影研の研究成果は、被爆者の健康と福祉の向上に加え、放射線の安全な利用の根拠となる科学的エビデンスを創出するなど、国内外の政策立案にも多大な貢献をしている。
  • 今年度は原爆被爆から80年、放影研設立から50年の節目を迎え、記念式典の開催に加え、原爆被爆者や地域社会および、有力学術誌のコメンタリーや特集号等といった学術界への発信も行い、放影研のプレゼンスを国内外においていっそう高める年となった。
  • 造血器腫瘍の発生は、放射線被ばくがもたらす健康影響の一つであり、放影研はそのメカニズムの解明に力を入れてきた。腫瘍は細胞の遺伝子変化によって起こるが、近年では、遺伝子解析技術の進展により、腫瘍が診断されるはるか以前の遺伝子変化を調べることができるようになっている。放影研はこの技術を取り入れ、放射線被ばくを受けた人の血液にどのような遺伝子変化を持った細胞があり、どのように診断可能な腫瘍の発生につながるかを明らかにしてきた。この成果は、放射線被ばくが造血器腫瘍を発生させるメカニズムの理解、さらには事前にそのリスクを知る技術の開発にもつながり得るものと期待している。
  • トリオ研究については、世界の中でも放影研でしか成し得ない極めて独創的な研究である。放影研では約10年をかけて綿密な事業計画が策定され、実験手法の確立、研究所内外の強固な協力体制の構築、調査協力者への丁寧な説明とインフォームドコンセントの取得、倫理委員会の承認、被爆者を始めとする利害関係者や市民を含む社会への十分な説明を積極的に行い、昨年度の本委員会では、本格的な解析を開始する準備ができていることを確認した。本年度の本委員会では、インフォームドコンセントの取得が加速し、研究参加者への支援体制と社会との連携を進める体制が整備されたため、トリオ研究の本格的研究を開始したことが報告された。
  • 研究資源センターについては、次の通り。放影研では、原爆被爆者やその二世の方のご協力によって集められた様々な疫学的なデータ、臨床データ、被ばく線量、病理学的標本等の様々な貴重な情報や生体試料が保管されている。放影研では、このセンターの下で、それらを整理し情報を一元化する試みが進められており、その状況を確認した。引き続き、貴重な情報や試料を整理し、役立てていくことを期待している。
  • ハイスループット遺伝子型研究の準備状況については、次の通り。人には多様な個人差があり、その多様性の一部は個人間の遺伝子の違いに由来することが知られている。このような遺伝子の多様性が放射線被ばくの健康影響にどのように関係するかは、わかっていないことが多い。放影研では、原爆被爆者の非常に古い生体試料からこのような遺伝子の違いを調べる研究を進めており、その状況が報告された。
  • 放影研では、現体制の元で積極的な人材登用が進んだことを確認した。これは、研究部門間の協力が必要な大規模な研究プロジェクトが始まりつつある放影研にとって、非常に時宜を得たものである。
  • 放影研は2027年初頭に広島大学キャンパス内への移転を予定している。この移転を期に、広島大学との連携研究が一層進むのはもちろんのこと、長崎大学との連携研究を強化し、併せて放影研の将来像の検討が進むことを期待する。
  • 今後も引き続き、研究活動を通じて、原爆被爆者と被爆二世の方々及び人類の健康と福祉に資する研究活動を期待する。

科学諮問委員会への参加者

  • 科学諮問委員
  • Nilanjan Chatterjee 米国ジョンズ・ホプキンズ大学 ブルームバーグ公衆衛生大学院生物統計学部門および医学部腫瘍学部門 ブルームバーグ特別教授(共同座長)
  • 今岡 達彦 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 放射線医学研究所 放射線影響予防研究部 部長(共同座長)
  • Patrick Concannon 米国フロリダ大学 医学部病理学・免疫学・臨床検査医学科 名誉教授*
  • 島田 義也: 公益財団法人 環境科学技術研究所 理事長
  • Montserrat Garcia-Closas ロンドン大学がん研究所 疫学教授兼グループリーダー
  • Melissa Haendel 米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校 精密医療・トランスレーショナル情報学部長、サラ・グラハム・キーナン特別教授、データサイエンス・社会学部教授(遺伝学・小児医学)、NC TraCS 計算科学部副部長およびUNC医療システム研究データ相互運用性アドバイザー
  • 松田 文彦 京都大学大学院 医学研究科附属ゲノム医学センター長
  • 鈴木 元 医療法人保内郷厚生会 保内郷メディカルクリニック 医師
  • Gayle Woloschak 米国ノースウェスタン大学 ファインバーグ医学研究科 放射線腫瘍学部 教授
  • 山本 精一郎 静岡社会健康医学大学院大学 社会健康医学研究科 教授 国立研究開発法人 国立がん研究センター 特任研究員
  • *オンライン参加

  • 特別科学諮問委員
  • 高橋 康一: 米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター がん医療部門 白血病科 准教授
  • Kelly Bolton 米国ワシントン大学 腫瘍学部門 ジョン・T・ミリケン医学科 助教授(医学)

  • オブザーバー
  • 堀 仁美: 厚生労働省 健康・生活衛生局 総務課原子爆弾被爆者援護対策室長
  • Joey Zhou 米国エネルギー省 上級疫学者
  • Cato Milder 米国エネルギー省 環境保健安全保障局 健康調査・元従業員プログラム室 日本プログラム主事
  • Daniel Mulrow 全米科学・工学・医学アカデミーズ 原子力・放射線研究委員会 プログラム担当官
  • 早野 龍五: 東京大学名誉教授(放影研評議員)

  • 放影研
  • 神谷 研二: 理事長(代表理事)
  • Preetha Rajaraman 副理事長兼業務執行理事
  • 兒玉 和紀: 業務執行理事
  • Todd DeWees 主席研究員
  • 田邉 修: 主席研究員/バイオサンプル研究センター長
  • 金岡 里充: 事務局長