成人健康調査における転出入率

この記事は RERF Update 3(3):10, 1991に掲載されたものの翻訳です。


日本には戸籍として知られる家族登録制度があるため、寿命調査対象者の死亡に関する情報はほぼ完全に収集できるが、その他の入手情報についてはそうとは言えない。特に広島・長崎の腫瘍登録によるがん罹患データの解析では、対象地区からの転出または対象地区への転入が報告症例数に影響を及ぼすのでそれを斟酌する必要がある。

図に成人健康調査対象者の推定転出入率を時間、被爆時年齢、性、および都市別に示す。これらの推定値は、対象地区から転出し、また転入する例を考慮に入れたモデルから得たもので、放影研の成人健康調査の担当者および臨床渉外課の連絡員が収集した情報に基づいている。 これらの  から、年齢の高い被爆者よりも若い被爆者の方が、また女性よりも男性の方が多く転出入していること、そして長崎の方が広島よりも転出入率が高いことが分かる。

これらの図に示されている推定値は、最近完了した寿命調査のがん罹患データの解析において、転出入調整を行う際の基準値として用いられた。この調整の基礎となる概念については、解説・総説シリーズで別に論ずる。

 

図. 成人健康調査における転出入率

 

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