LSS第12報:付録表

 この文書には、1950年10月1日から1990年末までの寿命調査(LSS)部位別がん死亡率
データを要約した付録表が含まれています。このデータの主要な解析と考察はLSS第12報
の第1部に掲載されています。これらの付録表に加え、都市、性、臓器(結腸または骨髄)
線量、被爆時年齢および被爆後経過時間別に死亡率データを詳細に層化した二つのデータセ
ットが放影研から発表されています。ここに示された結果は症例および人年の臓器線量別の
表に基づいています。

 表はR12Supp.xls.という名称のExcel 7.0ワークシート・ファイルに含まれています。

 表1に示されているがんまたはがん群についてそれぞれ三つの表を作成しました。それぞ
れのセットの最後の二つの表は、線量および期間または被爆時年齢区分別の症例観察数、期
待数ならびに人年の分布を要約したものです。これらの表にはまた線量区分および性別の合
計人数が示されています。それぞれの表の期待症例数は、被爆時年齢および(妥当であれば)
性別の影響が考慮された層化過剰相対リスク(ERR)の線量に対して線形のモデルに基づい
て計算されました。期待症例数は、都市、性、被爆時年齢および到達年齢別の層化バックグ
ラウンドモデルより計算されました。 ERR推定値は単に観察値を期待値で割ったものから
1を引いた値です。

        表1:付録表で用いられているがん

がん・がん群  ICDコード(第9回改訂版)   臓器線量

固形がん         140 - 199            結腸
白血病          204 - 208            骨髄
胃                 151               胃
肺                 162               肺
肝臓            155(0, 1, 2)            肝臓
結腸               153               結腸
直腸               154               膀胱
膵臓               157               膵臓
食道               150               骨髄
胆嚢               156               肝臓
膀胱               188               膀胱
子宮             179 - 182            子宮
女性乳房           174               乳房
卵巣               183               卵巣
前立腺             185               膀胱
他の固形がん      140 - 199
             間の他のすべてのコード     結腸
悪性リンパ腫      200 - 202            骨髄
多発性骨髄腫       203               骨髄

 それぞれのセット内の第1表は特定部位に対するパラメータ推定値と、特定の仮説の検定
結果を示したものです。4 Gy未満のDS86遮蔽カーマ推定値が計算されている人のみに基づ
いた非線形線量反応に関する検定を除き、これらの推定値および検定は、DS86線量が計算
されたすべてのLSS対象者の解析に基づくものです。

 症例数が多く、放射線に関連した過剰リスクが認められる部位について、過剰相対リスク
モデルおよび過剰絶対リスクモデルの両方に関する詳細な結果が示してあります。他の部位
に対するパラメータ推定値計算と仮説検定は、ERRモデルについてのみ、要因の数を限定
して行われました。

                      解析と仮説検定に用いたモデル

 ERRの解析は層化バックグラウンドモデルに基づいています。層化変数は都市、性、被
爆時年齢および到達年齢です。より詳細なERR解析では線量に対して線形で、性および被
爆時年齢を修飾因子とする基本モデルを使用しました。このモデルで用いたERRは次のよ
うに表されます。

ERR =b1sd exp (b2(e - 30))

ただしb1sは性に依存する線量の影響、b2は被爆時年齢(e)の影響を表しています。モデル
中のeの使われ方から、線量影響パラメータは被爆時年齢が30歳であった人のリスクに相
当します。線形の到達年齢の対数を上記モデルの指数項に加えてERRに対する到達年齢の
影響を調べました。都市の影響を調べる際には男女で影響は同じと考えました。過剰症例数
が少なく完全なモデルを使用するのに十分でない部位については、被爆時年齢および性の影
響を通常通りにはモデルに組込みませんでした。

 乳がんを除き、バックグラウンド・リスクの完全なパラメトリック・モデルに対比して過
剰絶対リスクをモデル化しました。このモデルではバックグラウンド・リスクの対数は、70
歳で単独の節点を持ち、到達年齢の対数を含んでいる性別2次スプラインとして示しました。
このモデルの切片には性、都市および出生年が含まれています。乳がんのバックグラウン
ド・リスクは、50歳で単独の節点を持ち、到達年齢の対数を含んでいる線形スプラインと
してモデル化しました。切片には性および出生コホートが含まれています。過剰絶対リスク
に用いた基本モデルは次のように表されます。

EAR =b1sd exp (b2ln(age/50))

ただし、age は到達年齢であり、従って性別線量係数は50歳時のリスクを示しています。

                   仮説検定と信頼区間に関する技術的注釈

 多くの場合、仮説検定は尤度比検定に基づき、信頼区間はプロフィール尤度の直接評価に
より計算されています。しかし時として尤度比統計量、あるいはしばしば尤度に基づいた信
頼限界が計算不可能な場合があります。こうした状況が生ずるのは、最尤推定値または当該
パラメーターに対する信頼域のどこかで集団中の一部に対する線量影響が負であるときで
す。最尤推定値がない場合は採点法を用いました。信頼限界が計算できない場合は表中に
N.C.で示してあります。影響の比(性と都市の影響の比)の信頼区間の計算でも関連した問
題が生じます。分子と分母に対する同時信頼区間がこの両方の影響について0を含む場合、
すべての比の数値はデータと一致します。これは表中にall valuesで示してあります。同時
信頼区間が分母には0を含むが分子には含まない場合、この比に対する信頼区間は特定の区
間外の点すべてから構成されます。このような場合には正の下限および無限の上限(表中で
はinfで表示)を示す上限区間のみを報告しています。多くの場合、負の区間は我々が考え
るモデルでは計算することが不可能です。