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第48回科学諮問委員会をZoomで開催(3月25~27日 広島研究所)

第48回科学諮問委員会を2021年3月25日から27日までの3日間、放射線影響研究所(放影研)広島研究所で開催しました。この委員会は、放影研の科学的研究計画を検討し、新しい研究計画の認定又は実施中の研究計画の継続、もしくは変更に関して理事会及び評議員会に勧告する、科学の専門家からなる外部組織です。今年の会議は、コロナウイルス感染症拡大の影響が続いているため、Zoomを利用して開催しました。

3日にわたる開催期間中、米国と日本から10名の科学諮問委員と4名の特別科学諮問委員、合計14名が参加しました。 そのほか、2名の監事、および放影研評議員を含む14名のオブザーバーが会議を視聴しました。

審査される部署は、年度ごとに変わり、今年は、疫学部が審査の対象となりました。併せて、現在立ち上げを進めている研究資源センター(ABCC‐放影研のデータ・資料情報及び生体試料情報の集約、共同研究での利用のサポート、情報全般のアーカイブ(保存記録)の作成・管理及び放影研の研究者が研究資料や科学データを検索したりアクセスできる研究用の統合システムの構築等を目的とする)、バイオサンプル研究センター(原爆被爆者と被爆二世の方々から提供された血液、尿などの生体試料の保管及び一元的管理、並びにそれらを取り込んだデータベースの整備等を目的とする)、分子生物科学部(遺伝学(生物の遺伝現象やDNAを研究する生命科学)およびゲノミクス(ゲノムと遺伝子について研究する生命科学)などの研究を担当する)、さらに、放影研の将来の科学研究と組織運営の構想に向けた戦略計画に関しても議論されました。

初日の3月25日、会議は、理事長の丹羽太貫による放影研の戦略計画の説明に始まり、長期にわたり調査されている集団における放射線リスクだけでなく、個人の放射線リスクを理解することの重要性、および他の議題の中でも、原爆被爆者と被爆二世の方々に放影研の研究成果がどのように還元できるかについて、焦点が当てられました。

会議2日目、研究資源センター設立に向けた準備の進捗状況について報告がありました。続く、バイオサンプル研究センターの説明の中では、原爆被爆者と被爆二世の方々からご提供いただいた生体試料を用いた将来の共同研究におけるこのセンターの役割について述べられました。次いで、分子生物科学部の研究活動報告では被爆者家族(トリオ)を対象としたDNAレベルでの遺伝影響調査計画についての説明がありました。(トリオとは、被爆者家族(両親と子供で構成される家族で、少なくとも片親は被爆者)を意味し、親子のDNA配列を比較することで、親の被爆に由来する遺伝性突然変異の有無を調査します。

最終日、3月27日の午前、科学諮問委員は、勧告について審議を行いました。その後、Zoomを通してマスコミ8社が集まり記者会見が開催されました。会見の冒頭、科学諮問委員会共同座長の岐阜大学大学院医学系研究科教授、永田知里博士より科学諮問委員会の3日間の審査の概要説明がありました。もう一人の共同座長で、疫学者である米国スローン・ケタリング記念がんセンターのJonine Bernstein博士は、米国から参加していたため、記者会見には参加できませんでした。

永田博士による科学諮問委員会の概要報告は以下のとおり。

  • 会議に先立って制作された説明動画をもとに、科学諮問委員は事前に質問やコメントを提出できた。
  • 今回の科学諮問委員会で重要な議題を審査するために、研究資源の管理・運用と疫学の専門知識を持つ4人の特別科学諮問委員も参加した。
  • 放影研の首脳部は、確固たる戦略計画を立ており、科学諮問委員会はそれが実施されることを期待している。
  • バイオサンプル研究センターでは、生体試料のデータベースと管理システムなどで進展があった。生体試料は国内で保存され、共同利用はクラウド上で管理、運用の予定である。生体試料を使用する共同研究計画を考えると、セキュリティインフラ(情報管理における基盤整備や安全対策)がますます重要になる。
  • 疫学部で実施された研究は、放影研の研究の中で最も重要な要素のひとつであり、将来のプロジェクトへの期待は高い。
  • 研究資源センターの立ち上げは、放影研の将来における調査・研究の根幹をなすものとして非常に重要である。
  • 戦略計画の概要説明で述べられているように、将来の研究活動に関連した専門知識を持つ若い研究者を採用することが重要である。

今回の科学諮問委員会の参加者は以下のとおり。

科学諮問委員
Jonine Bernstein:
米国 スローン・ケタリング記念がんセンター 生存・転帰リスクプログラム担当疫学者 兼 共同リーダー (共同座長)
永田 知里:
岐阜大学大学院 医学系研究科 疫学・予防医学分野 教授 (共同座長)
山下 俊一:
福島県立医科大学 副学長 兼 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 高度被ばく医療センター長
Andrew Feinberg:
米国ジョンズ・ホプキンズ大学 医学部 ブルームバーグ医学特別教授 エピジェネティクス・センター所長
権藤 洋一:
東海大学 医学部 基礎医学系 分子生命科学 教授
甲斐 倫明:
大分県立看護科学大学 人間科学講座 環境保健学研究室 教授
松田 文彦:
京都大学大学院 医学研究科附属ゲノム医学センター長
Francesca Dominici:
米国 ハーバード公衆衛生大学院 学部長室 研究部門 上級副学部長 兼 生物統計学部 生物統計学 教授
Nilanjan Chatterjee:
米国 ジョンズ・ホプキンズ大学 医学部 ブルームバーグ公衆衛生大学院 腫瘍学部 生物統計学科 ブルームバーグ特別教授
Curtis Harris:
米国 国立衛生研究所・国立がん研究所 がん研究センター ヒト発がん研究室 室長 兼 分子遺伝学・発がん部門 部長

特別科学諮問委員
Jennifer Van Eyk:
米国 シダーズ・サイナイ医療センター 内科教授 高度臨床バイオシステム研究所 所長
桝屋 啓志:
国立研究開発法人 理化学研究所 バイオリソース研究センター 統合情報開発室 室長
Francine Grodstein:
米国 ラッシュアルツハイマー病センター 疫学者 ラッシュ医科大学 内科教授
井上 真奈美:
国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究部長

監 事
河野 隆:
広島総合法律会計事務所 公認会計士・税理士
Paul Dominick Preziotti:
米国公認会計士 Johnson Lambert LLP パートナー

オブザーバー
丸山 慧:
厚生労働省健康局総務課 課長補佐
Anthony Pierpoint:
米国エネルギー省 保健安全部 国内・国際健康調査室 室長
Isaf Al-Nabulsi:
米国エネルギー省 保健安全部 国内・国際健康調査室 日本プログラム主事/ヘルス・サイエンティスト・アドミニストレーター
Benjamin E. Foster:
米国大使館 エネルギー担当官・エネルギー省 日本事務所代表
Elizabeth Eide:
米国学士院 学術会議 地球生命研究部門 常任理事
Charles Ferguson:
米国学士院 学術会議 地球生命研究部門 原子力・放射線研究委員会 常任幹事
Rania Kosti:
米国学士院・工学院・医学院 原子力・放射線研究委員会 上級プログラム担当官

オブザーバー(放影研評議員)
米倉 義晴:
大阪大学 放射線科学基盤機構 放射線科学部門 特任教授
Jonathan M. Samet:
米国 コロラド大学 公衆衛生学部 学部長
Angela L. Bies:
米国 メリーランド大学 公共政策学部 世界的慈善および非営利事業リーダーシップ寄付講座 准教授
Joe W. Gray:
米国 オレゴン健康科学大学 医学部生物医学工学科 Gordon Moore 寄付講座長 兼 教授
早 野 龍 五:
東京大学 名誉教授
神 谷 研 二:
広島大学 副学長 兼 特任教授
Keith R. Yamamoto:
米国 カリフォルニア大学 サンフランシスコ校 教授、科学政策・戦略担当副総長、精密医療担当部長

放影研
丹羽 太貫: 理事長(代表理事)
Robert Ullrich: 副理事長 兼 研究担当理事
兒玉 和紀: 業務執行理事
Eric Grant: 主席研究員
田邉 修: 主席研究員 兼 バイオサンプル研究センター長
林 茂利: 事務局長