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第51回科学諮問委員会を開催

第51回科学諮問委員会の出席者
第51回科学諮問委員会を日本時間の2024年3月12日から14日まで、3日間にわたり開催しました。新型コロナウイルス感染症の影響により、近年はリモート形式での開催でしたが、今年度は5年振りに広島研究所において対面形式で開催されました。この委員会は、外部の専門家に放影研で進められている調査・研究を審査していただき、新たな研究計画の認定や進行中の研究の継続・変更に対して勧告を行っていただきます。
今回は、日本と米国から科学諮問委員10名のうち9名が参加しました。
また、厚生労働省、ならびに米国エネルギー省の担当官、および放影研評議員、監事もオブザーバーとして参加しました。
科学諮問委員会では重点的な審査を受ける部門やテーマが年度ごと変わり、今回は分子生物科学部、放影研コホート調査の進捗※、研究資源センター(科学研究およびバイオサンプル〔生体試料〕に関するデータの統合等を担う部門)について審査が行われました。
初日、3月12日の会議では、放影研理事長の神谷研二の挨拶に続いて、副理事長のプリーサ・ラジャラマンより研究戦略の概要を報告しました。それに続き、分子生物科学部、放影研コホート調査の進捗、研究資源センターの重点的な審査が行われました。
2日目の3月13日は、主に研究戦略計画に関する討議と研究施設の視察や臨床研究部、疫学部、統計部との会議が開催されました。
最終日、14日の午前は、放影研の組織的課題への対応、戦略計画に関連する取り組みと優先すべき課題に焦点が当てられ、研究インフラの整備や戦略計画の評価及び推進などの放影研の対応が討議されました。
上記の過程を経て委員会は勧告を作成し、全体の総括を行った後、記者会見が開催され、マスコミ11社12名の方にご参加いただきました。
会見の冒頭、日本側共同座長で京都大学大学院 医学研究科附属ゲノム医学センター センター長の松田文彦(まつだふみひこ)先生と、米国側共同座長で米国ノースウェスタン大学フェインバーグ医学研究科 放射線腫瘍学部 教授のゲイル・ウォロシャック先生が3日間の議論の概要をメディアへ説明しました。
※ | 放影研コホートとは、放射線が人体に与える影響を調べる集団調査です。被爆者、被爆二世の方々にご協力いただき、1950年代から継続しています。 |
科学諮問委員会の議論の概要は以下のとおり。
• | 昨年6月に研究所の理事長、副理事長の交代があり、理事長は放射線発がんを専門とし、副理事長は分子疫学の専門家である。専門性を生かした強いリーダーシップのもとに今後の放影研のさらなる発展を期待する。 |
• | 分子生物科学部から、放射線が次世代に及ぼす影響を調査するため、被爆者とその子どもたちのゲノム(全遺伝情報)を解析する研究が綿密に計画され、昨年の倫理審査で承認を得たことが報告された。また、小規模の試験的解析が行われ、被爆者を始めとする利害関係者や社会への十分な説明を経たのちに、規模を拡大した本格的な解析が開始される見込みであると報告された。本研究は、被爆者や被爆二世の多大な協力を得て長年蓄積してきた膨大な健康関連情報や生体試料を利活用して初めて可能となるもので、世界の中でも本研究所でしか成し得ない極めて独創的な研究である。また複数の部門の研究者がそれぞれの専門性を活かし、先端技術を活用して行う領域融合型の新しいスタイルの研究であり、通常の研究と比較してはるかに大きな成果が期待される。本研究によって得られた成果は、社会において様々な貢献が期待できる。綿密な事業計画に基づき強固な実施体制を構築し、研究所が一丸となって取り組むこと、また異なる専門性を有する国内外の研究機関との共同研究を積極的に推進すること、さらに、得られた成果が今後の研究に広く活用されることを望む。 |
• | 情報技術部が構築した情報統合データベースには、所内の複数の部署と連携して臨床情報および生体試料情報の蓄積が着実に進んでおり、今後の研究活動において、研究計画の立案、共同研究体制の構築や研究の円滑な推進に大きく貢献するものと期待している。 |
• | 本研究所の広島大学キャンパス内への移転を2025年度に行うことが報告された。この移転により、広島大学との人材の交流、新たな共同研究の機会がより多く得られることで、本研究所がさらに発展することを強く期待する。 |
• | 今後も引き続き、研究活動を通じて、人類の健康に資する研究活動を期待する。 |
科学諮問委員会への参加者一覧は下記の通りです。
科学諮問委員
Gayle Woloschak: 米国ノースウェスタン大学フェインバーグ医学研究科 放射線腫瘍学部 教授(共同座長)
松田 文彦: 京都大学大学院 医学研究科附属ゲノム医学センター長(共同座長)
Jonine Bernstein: 米国スローン・ケタリング記念がんセンター 生存・転帰・リスクプログラム担当疫学者兼共同リーダー
鈴木 元: 国際医療福祉大学クリニック教授 兼 院長(3月14日当時)
永田 知里: 岐阜大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学分野 教授
Nilanjan Chatterjee: 米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部 ブルームバーグ 公衆衛生大学院 腫瘍学部 生物統計学科ブルームバーグ 特別教授
島田 義也: 公益財団法人 環境科学技術研究所 理事長
Patrick Concannon: 米国フロリダ大学医学部 病理学・免疫学・ 臨床検査医学科 名誉教授
今岡 達彦: 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 放射線医学研究所 放射線影響研究部 修飾要因・幹細胞研究 グループ グループリーダー
監事
河野 隆: 河野隆公認会計士事務所 公認会計士・税理士
オブザーバー
岡野 和薫: 厚生労働省健康・生活衛生局総務課 原子爆弾被爆者援護対策室長 (オンライン参加)
原澤 朋史: 厚生労働省健康・生活衛生局総務課 課長補佐(オンライン参加)
大島 康太: 厚生労働省健康・生活衛生局総務課 原子爆弾被爆者援護対策室 課長補佐(オンライン参加)(3月14日当時)
S. Robin Elgart: 米国エネルギー省 環境保健安全保障局 保健安全部 国内・ 国際健康調査室長
Joey Zhou: 米国エネルギー省 日本プログラム主事代理、上級疫学者
Elizabeth Eide:米国学士院学術会議 地球生命研究部門 常任理事
Charles Ferguson: 原子力・放射線研究委員会 化学・技術委員会 上級幹事
Daniel Mulrow: 米国学士院・工学院・医学院 原子力・放射線研究委員会 プログラム担当官
Angela L. Bies: 米国メリーランド大学公共政策学部世界的慈善および非営利 事業リーダーシップ寄付講座 准教授(放影研評議員)
早野 龍五: 東京大学 名誉教授(放影研評議員)
放影研
神谷 研二: 理事長(代表理事)
Preetha Rajaraman: 副理事長兼業務執行理事
兒玉 和紀: 業務執行理事
田邉 修: 主席研究員兼バイオサンプル研究センター長
金岡 里充: 事務局長